死んで貰います
しめしめ、こんなに激しい雨ならガラスコーティングした車の少なくとも前半分は洗車できるな、なんてコトを考えつつ、「生身のコチラは安全のために自主休日かな?」などとほくそ笑んでいた。ところが、しばらくすると見る間に雲が流れ去り、なんと晴れ間が見えてきたではないか! TVの気象情報の大雨洪水警報も23区から千葉県、茨城県へと15分おきに変わって行ってしまった。
結局、雨に起こされて1時間もしないうちに自主休日は返上の憂き目にあったのである。
雨は上がって空は晴れて来たものの、風はスゴかった。雨よりも、むしろ風のために電車が遅れたりしてダイヤが乱れていたようだ。会社に着く頃にはますます強くなっていて、玄関から離れたエレベータホールにまで枯葉が舞い込んでいた。おまけに気温は22~23℃に達するという。猛暑の後の極寒という自然の帳尻合わせもどこへやら。
・・・・・・・
帰宅したら先日注文していた「昭和残侠伝シリーズ」のDVDが届いていた。これは先般92歳で亡くなった俳優・池部良氏の追悼番組で取り上げられていて、思わず通販で衝動買いしたブツだった。
このシリーズには、今から10年以上前、ふとした事から高倉健のヤクザ映画が大好きだと言っていた取引卸のM所長に、3本分をダビングしたVHSテープをプレゼントして大層喜ばれ、以後、何かにつけ世話になったという思い出もある。今夜はそのうちシリーズ第1作の「昭和残侠伝」と最終作の「昭和残侠伝 破れ傘」を立て続けに観た。
公開当時、私は小学生でせいぜい怪獣映画くらいしか知らなかったが、義理と人情のカタルシスと言うべきか、耐えに耐えた果てに爆発する憤怒をドスに込めて殴り込む、そこには必ず健さんに思いを寄せる女と命運を共にする池部良がいた。背中に背負った唐獅子牡丹の刺青が鮮やかに露出する頃、満身創痍の健さんが憎いカタキを追い詰める。そしてひと言、「死んで貰うぜ」。
今風なら友情と勝利と言うべきものをテーマにした映画が、アニメを含めて内外で多く製作されている。シナリオもあれこれと凝ったものが多い。だが、こんなにシンプルに観る者の心を打つ映画は、近年めっきり少なくなった気がする。伏線やウラ読み抜きに安心して酔える素直な展開こそがよりシビレさせるのだ。
特に、それまで二枚目俳優であり、映画俳優協会代表理事として暴力団との絶縁を宣言していた池部良氏は、当然の如くヤクザ映画への出演を断っている。だが、プロデューサーから「高倉健という若手を男にしてやってください」と懇願され、遂に出演を承知したという。
だからこそ、風間重吉役で健さんと殴り込みに行く時、逆に健さんに向かって言う「男にしてやってくだせぇ」のセリフにまた泣かされたりするのである。この時代の役者の立ち居振る舞いや目の迫力、「謡わない」セリフと「踊らない」演技は、近年ハリウッド路線の俳優が多い中、一見の価値大いにアリだ。
おやおや、山城新伍も松方弘樹も北島三郎も若いねぇ。三田佳子も星由里子も。壇ふみが新人だってよ。鶴田浩二は実に色っぽく、いい味出してる。やっぱ名優だねぇ。
手にした焼酎ロックの陶器の器と共に、心地良いひと時が蘇った。
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