ドナドナ
ATトラクション異常が発症した先月下旬から、ディーラーでの50万円AT全取っかえ診断やそれに追従するようなYの外車AT限界宣言などを経て、ついに買い換えを決意。ところが、もともとこの206を乗り潰すつもりで9年目の車検も通した私には、ある程度の予算内で乗り変えたい車なんてそう簡単には見つからなかった。
さらに紆余曲折の末、新車のみならずランクアップした中古車乗り継ぎという選択肢もある事に気づかされ、たどり着いたのがAlfa GT Exclusiveだった。が、良いのはデザインだけってコトであえなく撃沈。結局、最も選びたくなかったベンツ、BMW、アウディのようなゲルマン製装甲車へと徐々に導かれていった。
トドメは偶然ショールームで見た120iクーペとそのデモカーの格安購入提案だった。クーペならボディカラーはホワイトと決めていた私の好みとこれまた偶然一致。折しも雨の土曜日、閑散としたショールームにおける偶然のお導きだったのだろうか。はたまたこれが必然の運命と呼ぶべき出会いだったのだろうか。
さらに値引き倒した契約も順調に終わり、後は納車を待つのみとなった時、206に不思議とトラクション異常が出なくなった。正確に言えば、初めて出た後、ディーラーでのテストドライブで再発したものの、その後300km近く運転して来たが全くと言っていいほど出ていない。機械とはいえ、10年も一緒にいれば持ち主との間に何かが伝わり何かが芽生えていたのかもしれない。相棒最後のアピールか? そう思わされるエピソードだった。
・・・・・・・
名古屋に赴任していた2001年、とあるプジョーディーラーを訪れた時、入社以来初めての客が私だと照れくさそうに言った若い営業マンのM君。彼から4年落ちのVR-4(購入総額は350万円だった)を90万円で下取りに出して購入、いよいよ生涯初の外国車オーナー生活が始まったのである。
その後はプジョーオーナーのオフ会参加やホームページ立ち上げなどで、生活そのものがプジョー色に染まって行った。そもそもプジョー206は、一流ホテル横付けも似合うオシャレなデザインと足で地面をガッチリ掴んでクイックターンでコーナーをクリアして行く、本当のFun to Driveを味わわせてくれる走りの楽しさが両立した車だったのだから、それも当然と言えば当然だろう。
納車以来幸いな事に駆動系はもちろんのこと、トラブルというトラブルも無く、ロングドライブでも腰に来ない抜群のシートに座りながらエキセントリックな日々は流れて行った。もっとも、何かのイベントでもない限り、日常は買い物車と化してはいたけれど。
・・・・・・・
最後の日までの総走行距離は35728km。という事は年間平均走行距離約4000km。とてもプジョーフリークとは思えない体たらくだが、もっともっと長く乗り続けられると信じていたから、ほとんどメンテフリー(放置プレイ)にしている相棒には、これくらいのペースで妥当なんだと言い聞かせてもいた。
だがその日は思いがけずやって来た。これも機械の宿命というものなのだろう。
それでも、まるで不治の病に冒された相棒を見捨てるような後ろめたさすら感じつつ、これも一期一会とはいえ、お疲れさまという言葉だけでは何とも切ない。
今、家のガレージは次の相棒のためにポッカリと空いている。そのスペースがまた、無性に寂しくもある。