続 さて、どうしたものか?
その男とは、中学校で同級生だったYである。彼は一族の自動車販売事業に携わっていたが、かなり前に独立して個人の販売ショップを経営している。彼の一番の得意先は近隣にある警察署の警察官丸ごとで、そこからも彼の人柄と面倒見の良さが伺い知れると言ったらホメ過ぎか。
私も彼から初代セフィーロ、ギャランVR-4を購入したり、車検整備を依頼したりして長い付き合いを続けている。彼の口グセである「車は国産が一番。でなければベンツあたりのドイツ車まで」が確固たる持論と言ってもいい。私がプジョーを購入しようかと名古屋から相談した時も、案の定、「ヤメておけ。道の真ん中で止まったら大変だぞ」だった。
そんな彼だったが、今回は「外国車のATは10年前後でガタが来る事が多いから、全とっかえがイヤなら早目に手放した方がいいぞ」だった。「でも、限られた予算で乗り換えようと思える車が見当たらない」と言うと、「新車じゃなきゃダメか? ランクアップした車を程度の良い中古車で乗り継ぐって手もあるぞ」
そうか! 新車の時は高くて手が出なかったモデルでも、今なら予算内で乗れるかもしれない。仮にあと20年車に乗るとして、今新車で買った車を乗り続けられるワケもない。だとしたら、生涯最後の車を購入する時はまだ先だから、数年は中古でも乗りたかった車に乗る方が、心残りも少なくなるだろう。ウン、その選択肢もアリだな。
とは言え、プジョーのATトラクション異常がいつ頻発状態になるかは予断を許さない。ここは新車と中古車の両面から早急に検討しておかなくてはならなかった。カミさんにその事を告げて協議し、50万円AT全とっかえコースはヤメ、買い替えの車両価格は上限250万円との合意を取った。
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早速予算内での新車を検討。プジョー206の時もそうだったが、VR-4以降、もはや車に過度の速さは求めない。むしろいかにオシャレな車をさりげなく乗りこなせるモデルかが、低予算車に求められる生命線だと思っている。高い車が買える身分だったら、そんな事にこだわらなくても魅力的なモデルはいくらでもあるから、ここは実に切ないこだわりである。
同じフランス車のシトロエンDS3や同価格帯のVWポロなどを視野に入れながらも、残念ながらそれらの車には琴線に触れる感覚をイマイチ覚えられなかった。やがて目に付いたのは、発売間もない「FIAT Punt EVO」だった。
上級バージョンで230万円、4ドアで車幅は5ナンバー枠、白いボディにブラック&ボルドーのインテリアは十分オシャレ、これなら納得度もそこそこ。だが、最大の欠点はエンジンがわずか77PSしかない事だった。このエンジンはブン回して走るタイプだが、それでも非力なのは否めない。せめて本国のマルチエアー105PSエンジンモデルがあったら即決していただろう。
中古車部門では、Yとの電話で乗りたい車を訊かれて思わず口走ったのが「アウディTTクーペ」だった。
10年ほど前の新車価格が400万円というのは完全に高嶺の花だった。今は二代目になっているが、興味があるのはあくまで初代のデザインである。1.8LターボモデルならS-Lineでも4年落ち程度で200万円以内だと思う。さっそくWeb検索すると、2年落ちのS-Line、レザーシート、DVDナビ付きで180万円弱が出て来た。すぐにHPから見積り依頼を出したのだが、この会社は明日まで社内旅行で休業中との事。これじゃ、カミさんの休みに合せてせっかく取った休みなのに実車を見に行く事すらできないじゃないか。
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仕方がないので、せめて新車部門の見学にでもと連れて行ったのが杉並区のFIAT&ALFAのディーラー。Punt EVOを見たカミさんの反応は意外にも鈍い。逆に、傍らにあった「500C」にいたく興味を持って、300万円近いモデルなのに「これがカワイくていいな!」と言い出す始末。「それは若い女性が似合う車で、中年カップルにはどう見ても合わないでしょ!」と、こんこんと言って聞かせたのである。
結局、新車部門は諦めて中古車部門候補のアウディTTをどこかのショップにでも見に行こうかと思った矢先、ふとあるモノが目に入った。この後、それがキッカケとなり、我々にトンデモナイ展開が待ち受けていたのだった。
つづく
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