超人 柏原竜二降臨!
前半の見所は、各校のエースが登場する「花の2区」。今年も日大のダニエル選手がトップの明大と約2分差の13位でタスキを受け取ると、今年も期待通りに区間賞の11人ゴボウ抜きで明大に続く2位に躍進した。また東海大もスーパールーキー村澤選手の10人抜きで4位に浮上した。さすが花の2区だ。
だが私の興味は前回初優勝の東洋大の順位だ。そう、昨年1年生で鮮烈なデビューをしたあの「新・山の神」柏原竜二選手の走りが今年の最大の目玉なのである。5区で彼がタスキを受け取る時のトップとのタイム差はどれくらいか? 逆にどれくらいなら逆転往路優勝が可能な圏内なのか? と興味は尽きない。
彼は前回、トップと約5分差の9位でタスキを受け取り、8人をゴボウ抜きし、かつて山の神と呼ばれた順天大の今井正人選手の区間記録を47秒も更新して往路優勝、そして総合初優勝の立役者となった。だから彼が前回と同じ走りが出来るとしたら5分や6分のタイム差だったら全く問題ない。
果たしてタスキはトップと4分26秒差でつながった。さて彼の走りやいかに?
今年も期待に違わず、あっさり12kmまでに先行選手6人を抜き去りトップに立ち、後は独走態勢。素人目にもスピードも馬力も他の選手とは別格なのが明らかだった。後は彼が目標と語っていた区間新記録へタイムとの勝負のみだ。結果、目標の76分台にはわずかに及ばなかったものの、何と自身の区間新記録を10秒も上回る77分08秒を叩き出したのだった。もはや彼を超人と呼ばずして何と呼べと言うのか! 超人降臨! 卒業するまでの2年間、彼はまだまだ我々を楽しませてくれる事だろう。
だが、2位に3分36秒差は総合優勝のためのセーフティリードとは決して言えないので、復路勝負の楽しみも残った。
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山上りの超人ショーの興奮も冷めやらぬまま、復路が始まった。
東洋大に3分半以上のタイム差をつけられてスタートした2位の山梨学院大は、小田原中継所で2分50秒差まで詰めた。だが、その後はタイム差が縮まるどころか7区では逆に4分半まで広がってしまい、このまま東洋大の逃げ切りV2が濃厚となって来た。
復路のもう一つの見所は熾烈なシード権争いである。
総合10位以内に入れば来年の出場は保障されるが、11位以下だと秋の地獄の予選会をクリアしなければ出場できなくなるから、10位と11位のたった1つの順位の差はまさに天国と地獄、埋めるにはあまりに大きすぎる差なのだ。
8区でそのボーダーラインにいるのが日体大。前回シード権獲得も駅伝メンバー以外の陸上部員の不祥事によってシード権取り消しに加えて対外試合出場を禁じられ、地獄の予選会を勝ち抜いての出場となった。優勝には手が届かなくても、最低でも再度シード権獲得を果たしたいという気持ちが一番強いはずだ。
また、もう一つの地獄である屈辱の繰上げスタートによるタスキリレーの途絶。リレーする相手のいない中継所へ辿り着いたランナーの流す悔し涙と仲間への謝罪シーンはいつ見ても胸が締め付けられるが、それも往路から出遅れた最下位亜細亜大の頑張り次第だ。各選手に大幅なブレーキや棄権せざるを得ないようなアクシデントが起きていないのも見ていて何とも気持ちがいい。
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さて終盤の勝負は、9区への戸塚中継所で2位山梨学院大とのタイム差を5分半まで広げた東洋大の逃げ切りV2がさらに濃厚となった。この差ならよっぽどのアクシデントが発生しない限り総合優勝は確実だろう。シード権争いも、ここまで10位日体大と11位東海大には2分半以上のタイム差がついている。
9区の後半で、1分半差をつけられていた3位の駒沢大が2位の山梨学院大を逆転するという場面があった。去年、無念の途中棄権をした城西大も6位でアンカーへタスキリレーを終えた。去年途中棄権した石田選手は今年は7区を走り、今年は見事に走り切って仲間に万感の思いを込めて感謝するシーンが印象的だった。
繰上げスタート阻止のため必死の走りを続けていた亜細亜大。残り2kmを6分、1km3分で行かなくては制限時間であるトップの通過後20分が来てしてしまう。だが、制限時間になっても中継所に続く150mの長い直線にランナーの姿はなかった。繰上げスタートの号砲が鳴った。この瞬間、記録は続くがタスキは途絶えた。アンカーが繰り上げスタートした無人のゴールに飛び込んだ船村選手は涙に暮れた。
アンカー高見選手が満面の笑みと共に大手町のゴールに飛び込んだ。これで東洋大は箱根駅伝2連覇という、駒沢大4連覇以来の偉業を成し遂げたのである。2位の駒沢大とのタイム差は4分弱、文句なしの完勝だった。一方のシード権争いは、最後の最後で日体大に抜かれた明大までの10校が手中に収めた。11位帝京大とのタイム差は3分弱、しかしこの差があまりにも大きな明暗を分けたのだった。
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日曜日の晩のサザエさんじゃないけれど、箱根駅伝が終われば正月気分に浸るのもそろそろ終わりという気分になって来る。ましてや今年は、じゃなかった今年も! 1月からイレギュラーな研修ツアーが待っている。だいたい出社後1週間までは正月ボケからのリハビリ期間だと勝手に承知している私なのだが、今年もそんな寝言なんて言ってられないわな。
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