持たない美学

ある日の昼飯時の会話で、こんな話が出た。

「通勤時間帯の電車内でよく見かけるんだけど、最近カバンをナナメ掛けにしている男が増えた気がする」すると女性の同僚が、「そう言われれば、リュックを背負った人も多いわね」私も毎朝のようにそういう姿を目にしているが、学生風のカジュアルな連中と同時にスーツ姿のサラリーマンもよく目に留まる。実は近しい部署の同僚Mもその一人なんだけど・・・ズングリムックリの体型もあって、どう見ても「トッチャン坊や」にしか見えない。

そう、それはおよそ格好の良いものとは言えないだろう。だがそうしている大部分の人の動機として、両手がフリーになって楽になるからというのは容易に推察できる。確かに両手がフリーであれば本を読むも良し、ケータイをいじくるも良しだ。それでも私には、本人の潜在的な幼児性の表われと見えてしまうのであるが・・・。

実は、それ以上に現実的な問題があるのだ。それはリュックにせよナナメ掛けにせよ、そのカバンの体積分だけ本人の身体よりも外側にハミ出るという事だ。これがスシ詰め電車内で何をもたらすか? 単なる占有面積の違いという話ではない。結論から先に言うと、その本人の周りにいる人間に、身体と足の位置のズレを生じさせるという事なのである。

つまり、その本人の周囲にいる人間に対してハミ出たリュックやカバンの分のプレッシャーがかかり、押された側はそれによる痛みを我慢するか、もしくは身体をナナメにせざるを得なくなる。しかし足場は、さらに外側に立っている人達によって固められているため移動できる余地はない。いきおい上半身と下半身がズレて非常にタイトな姿勢を強いられる事になるのだ。

これには私も幾度となくツライ姿勢に追い込まれた事がある。ツリ革につかまれればまだ良いが、それも出来ない時は、決して軽くはない私の体重の殆どが、不幸にも隣に立っている人にかかって行く事になる。それが女性でなくても恐縮至極なのだが、少なくとも次の駅まではどうにもならない。

気の利いた人は、リュックやカバンを自分の身体の前に移動させてそれを回避しようとするが、そんな人はまだ一部である。特に若い連中にそんな気配りなんてあり得ないと言ってもいいだろう。

さらにもう一つ気になる事がある。

特にカジュアルな服装の男に多く見られるのが、彼らの腰にぶら下がっている職人の道具箱のような袋である。たぶんその中にはサイフにケータイ、タバコなどの常備アイテムが入っていると思われるが、鎖ジャラジャラのサイフ&鍵の束と同様、本人はカッコイイつもりかもしれないが、こと江戸っ子、いや東京人から見れば、何ともみっともない男の姿にしか映らないのだ。

江戸の昔から、ひとたび仕事を離れた男はあれこれ持たない、すなわち着流しに手ぶらが最も粋とされていた。銭入れの一つくらいは懐に忍ばせていただろうが、そうして彼らは颯爽と風に吹かれて歩いていたのである。

常備アイテムの増えた現代では無理だと言うのなら、せめて上着なりを羽織って、その中に収めておければ良い。着ている物はシャツ1枚とシンプルなくせに、あれこれ持ったり背負ったり身体の脇にぶら下げたりが「ダサい」と言いたいのだ。男は仕事以外に道具は持たず、何かあってもこの身一つで対処したという昔の男の心意気とは対極にしか映らないのである。

街歩きの時でも常備アイテム、日用品からペットボトルに至るまで背負って抱えてぶら下げてでは、まさに男がすたるというものじゃなかろうか。ここは都会、ハイキングでもサバイバルゲームでもない。サイフやカギなんて大事な物はジャラジャラさせてないでポケットにしまっとけ! ペットボトルを持ち歩かなくても、ノドが乾けば飲み物なぞいくらでも手に入るだろが!

前述したように、もはやこの現象はプライベートシーンだけの話ではない。それとも常にあれこれ持ち歩かなければならないほど、現代の男は何かに不安で、何かに追い立てられているのか? それとも今ハヤリの草食男子の特徴なのか? 私などは通勤時間の短さも手伝って、カバン一つ持たずに通勤する事もしばしばなのに。

いかに持たずに外へ出るか。ここに粋な男の美学の一端があると言っては言い過ぎだろうか?




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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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