温故知新シリーズ 17
このtraining campの最大の売り物は「Question Training」と呼ばれる、quick response training である。
native speakerの講師がstopwatch 片手に比較的簡単なphraseのquestionを大声で早口に言ってくる。言ってくるというより怒鳴ってくると言った方が正しい。瞬時に大声で「Yes,~」、「No,~」と決められた回答を full sentence で返す。まごつこうものなら 「Quicker!(早く!)」、声が小さくなると 「Louder!(大声で!)」 とツッコまれる。「a」や「the」、動詞の変化、単数複数の間違いにも瞬時に声が飛ぶ。これが最低1人1分間は続き、1lesson 40分間に4種の異なる answer variation で回答する。講師からの質問も内容がどんどん変化する「Times up!」の声に思わず机に倒れ込む。これが他のlessonを挟んで1日3回実施される。まさに地獄の特訓。
たかだか一番やさしい「Is this your notebook.? 」というphraseでさえ、講師から早口で言われ、瞬時に「Yes, this is my notebook.」や「No, this isn't my notebook.」と返したり、さらには講師の言った答えになるよう、逆にこちらから質問形として返すことなど、聴き取るだけでも大変で、完全に答える事は中級者でも難しいだろう。日を追って、現在形、過去形、進行形、完了形など10数種類のvariationでこれが行われる。常にすばやく大声で…。
こんなlessonはここの他にはまずお目にかかれないと断言する。なぜならば、このlessonには、答える我々以上に講師に莫大なenergyが要求されるからである。事実、ここの講師は皆20代後半から30代前半で、毎晩身体を鍛えているほどだ。駅前留学や他の合宿のsalaried workerの講師あたりではやろうとも思わないだろうし、体力的にも不可能である。
相手を恐れない度胸、頭の中でいちいち日本語に翻訳する悪癖矯正、英語的思考力そして聴力を養う上でこれ以上のtrainingはない。講師がfull of beam(エネルギッシュ)であるほど盛り上がる。こちらも机から身を乗り出し、講師とblow to blow, nose to nose, splash to splashでの攻防である。私は汗だくになって、左手に towel を握りしめ、右手で机を叩きながら応戦した。ある時は講師の思いやり(?)で最大3分間続いた事もあった。
初日のlevel check testでlow levelのD class となった我々5人(Team Turtle : named from Stewardess Story)は「声だけは意地でも負けてたまるか!」 の合言葉のもと、彼らが過去に経験した中で一番大声のclassだったと見事言わしめた。私の声は4日目に潰れたが、替りに2人の講師の声も潰した。我々は次第に英語を「音」として捕らえ「音」で考え、「音」に反応できるようになっていった。それでも7日間では、かなりの進歩はあったものの、ついに完全に返答できるには至らなかった。
このtrainingを受けていて気がついたが、我々が闘っている相手は、実は講師ではない。英語を中学校以来大学受験まで勉強して来て、これ位はできるはずだという自分のprideと闘っているのである。だから出来ないと悔しくてたまらない。自分が許せないのだ。事実、他のclassには涙している者もいたという。
この経験は貴重である。一度見事に敗れ、失うものが無くなれば、人はさらに強くなる。もとより講師にとっては、我々が間違う事なんて当たり前だと思っているし、間違いにはひとつひとつきちんとadviceをくれる。我々にぶつけて来る情熱とは裏腹に、彼らのまなざしは優しさに満ちている。私はそこに、彼らのadvice以上の大きな愛情を感じた。
もしもあなたが英会話上達のbreakthroughが欲しいのなら、私は迷わずこのtraining campをお勧めする。
(③へ続く)
(2003年9月 記)
・・・・・・・
このクエスチョン・トレーニングには燃えた。
決して難しい質問を食らうわけではないのだが、その代わりほぼ条件反射的に省略のないフル・センテンスでの回答が求められる。しかも大声で。英語を理屈ではなく音の感覚として捉えるのが上達のために必須であるとの考え方によるものだった。今でも最もチャレンジングで外人相手に臆する事をなくすためには最も効果的なトレーニングだと思っている。
夏の富士山麓の合宿所は、それなりに自然を感じられる環境だったが、夜ともなると虫の大群は飛んで来るわ、玄関から洗面所あたりにはゴキブリが列を成して行進するわで、ある意味こっちの方が地獄だった。それでも集団生活だったからまだガマンも出来たが、大のゴキブリ嫌いの私一人だったらとっくに逃げ出していただろう苛酷な環境でもあった。
・・・それから2年後に、都内でのワンデイ・レッスン企画に参加して、またしてもJonathanからクエスチョン・トレーニングの洗礼を浴びる事になろうとは夢にも思っていなかった。
・・・その時のエントリ→「地獄のトレーニングふたたび」
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