温故知新シリーズ 15

<日本酒考 ② ~おいおい、その酒どこの酒?~ >


清酒が造られるオンシーズンは、秋口から翌年の春先です。すなわち、通常1年間で売られる清酒は、この時期に生産された量となるわけです。ところが、良く考えてみてください。特に大手メーカーのものは、全国の非常に多くの酒屋や飲食店に置いてあり、頻繁に見る機会があります。不思議だと思いませんか?

大手の酒造メーカーがどんなに大きな工場を持っていたとしても、とても全国津々浦々にまで供給できる量を自社生産できるわけがありませんよね? でも、壮絶な競争で得たシェアを維持拡大してゆかねばなりません。自社で賄いきれない場合、通常の工業製品等でしたらどうしますか? そう、下請けに依頼しますよね。それが、なんと清酒の世界でも存在するのです! 

これを 「桶買い」 と言います。自社生産が需要に追いつかない場合、あるいは安定供給のために、全国の中小酒造会社の醸造桶(今はタンク)ごと買い上げるのです! 緊急時の対策と言うより、生産確保のために継続的に契約している場合がほとんどです。工業製品等は、部品さえ同じであれば生産地がどこであっても同じ製品ができるでしょう。しかし、清酒は生き物です。産地が違えば味も香りも異なるものです。元来下請けなど無理な製品なのです。そこで酒造会社は考えました。

1つ目は、自社品とのブレンドです。桶買い清酒と一定比率でブレンドすれば、ある程度味の均一化が図れます。ブレンドするということは、味の低下に直結するものではありませんが、全国で作られた桶買い清酒は、たとえ大手メーカーが製造方法を指示したとしても、それぞれ産地による違いは出ます。当然、味の均一性には限界がありますし、この時点で 「○○の銘酒」 とはもはや言えません。しいて言えば、出生地不詳の挙動不審酒でしょう。

2つ目は、味の調整です。ここで登場するのは、三増酒でもおなじみの化学調味料と糖類や有機酸類です。これらを駆使して、自社ブランドと同じ味になるよう仕上げるのです。という事は、もともとの自社ブランド品も似たような製法で作られているということでしょう。これでは合成飲料の世界そのものです。場合によっては、ブレンドと味の調整を同時進行させる事もあります。

さらに、異臭や雑味を取り除き、いわゆる淡麗にするために多量の活性炭素を使用したり、余分な水を加えたりもします。名酒即ち水の如しではなく、ただの水っぽい酒なのですが、一時の淡麓ブームの時には大モテでした。辛口ブームの時は、アルコールの添加量を増やし、いたずらに辛口を謳った酒がはやったりしました。また、吟醸酒と言いながら粗雑な造りをし、後からその香り(濃縮液)を混ぜ込んだりもします。こんな酒では百薬の長ならず、百毒の塊かもしれません。

これが大手酒造メーカーだけでしたら、我々にも選択の余地があるのですが、なんと有名地酒の幻と言われた銘柄の酒造会社ですら行われていたのです! ウマイ地酒というイメージと名前が先行し、需要が激増した結果、当然生産が追いつかなくなります。本来は、だからこそ 「幻」 のはずなんですが、知名度の高くなった今は引く手あまた、通常の蔵出し価格の何倍もの高値で売れますし、この好機を逃す手はないと考えたのでしょうか。我々の間の評価では、一気に駄酒に転げ落ちて行きました。信用失墜のツケは意外と大きいと思います。

このような関門をかいくぐって、本当の本物のウマイ酒にたどり着くためには、どうすれば良いのでしょう? 

先ずは清酒を選ぶ際は、最低限排除すべき条件の酒は当然排除しましょう。あとは何事もそうですが、経験の量を増やすのみです。たくさんの清酒を飲むうちに自然と舌が鋭敏に研ぎ澄まされ、ひとつひとつ味が記憶されてゆきます。ある程度蓄積されたその時、振り返ってみてまた飲みたいと思えた清酒こそ、マイ・ベストチョイスであると自信を持ってください。


(2003年7月 記)

・・・・・・・

初めての連作エッセイで取り上げたのが、自称「日本酒のソムリエ」というくらい好きな吟醸酒に関するテーマだった。

ところが、今でも吟醸酒に代表される清酒が最も好きな酒に変わりはないのだが、近年、めっきり飲む機会が減ってしまった。40代中盤あたりから、飲み会などで吟醸酒といえども5合以上飲んだ翌日は、必ずと言っていいほど酒が残り、ひどい時は二日酔い状態になってしまうのだ。

こんな事は、あまり品質のよろしくない酒に限って起こると思っていたのだが、40代後半あたりからそれは自分の歳のせいだと悟った。だから今は、よっぽどいい刺身でもない限り、とりあえずビールの後は躊躇なく焼酎ロックへシフトする。そういう酒飲みは私だけではないらしく、外で飲む吟醸酒はあまり売れないようで、かなりコストパフォーマンスが悪くなっている。特に3人以上で飲む時は、焼酎のボトルを注文した方が圧倒的にリーズナブルである。

吟醸酒や清酒の今を語ると、結局いつもこんなグチともつかぬ話になるのは残念だ。でも時々は、主だった銘柄の味の記憶のブラッシュアップのために飲んでいる。地方の酒蔵に行った時などは、お土産として買って帰る事もある。しかしながら、4年前にタバコを止めてから家でも飲むようになったものの、もっぱら晩酌の友はネット購入した焼酎の一升瓶だ。

というわけで、このエッセイに書いた内容が7年経った今でもアリなのかは定かではない。けれども飲み手に感動を与えてくれ、称賛に値する吟醸酒が今もって存在しているのは動かぬ事実である。それとの出会いを心待ちにしている私も。まだまだ枯れてしまうわけにはいかないじゃないか。







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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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