温故知新シリーズ 13
巷に口当たりの良い柔らかい食べ物が増えてきたのと同時期に、「理想の男性像」 アンケートのトップに 「やさしい男性」 が占めるようになってきました。確かにやさしい男性というのは、女性から見れば求める大きな要素のひとつでありましょう。
さて、ここで問題なのは 「やさしい男性」 とは 「やさしいだけの男」 なのか 「やさしさもある男」 なのかということです。元来動物のオスは、生存のために外敵などからメスや子供を守る強さがあることが存在意義ですし、それができるオスの遺伝子は子孫へ受け継がれるチャンスが得られます。
昔の男たちは動物のオスよろしく強く逞しい人が多かったようです。異性には目もくれず、己が生きる道を突き進むという生き様が男性像の代表だったのではないでしょうか。いわゆる 「硬派」 と言われる男たちは、肉体面のみならず精神面も強く、艱難辛苦に臆することなく大志を具現化していった人達です。同性異性を問わず支持されるのももっともなことです。
翻って現代はどうでしょうか? 少なくとも今の日本は治安は良好で、面と向かって外敵に攻撃される心配はほとんど無いと言って良いでしょう。したがってオスに求められる強さの部分の必要性が薄れ、やさしく面白い男性が異性受けすることとなったのです。女性側からみても特に男性に守ってもらわなければならない危機というものはなく、強く逞しい男よりもやさしく面白い男に日々の、あるいは人生のパートナーとしての価値を求めているのかもしれません。
強さ、逞しさをアピールする必要の無くなった男性は、今度はいかにやさしく面白い男であるかを女性にアピールしなくてはなりません。それは内面の個性とも言うべきものなのですが、アピールには外見も重要な武器です。イケメン系を目指して服にこだわり、ダイエットで外見を磨き、ムダ毛を抜き、全身エステもめずらしくありません。強さ、逞しさの要素は自分の中から次第に失われていきます。でもかまわないのです。だって対象である女性は、それを求めてはいないのですから。面白い人だからお手軽だし、やさしい人だから負担にならない。
かくして女性主導の恋愛関係が成立し、男性はいついかなる時でも彼女に対してやさしく面白くあらねばならないのです。「・・・彼は面白くて私を飽きさせないし、いつだってグチも聞いてくれる。彼といると日々のストレスも癒されるわ」 「・・・ケンカしたって大丈夫。たいていは相手のせいにしちゃえるし、私が悪くても最後には全部許してくれちゃうもん。ウザくなったら次探せばいいし・・・」 付き合いの舵取りは女性に委ねられ、あげくに三行半(みくだりはん=死語)を出されて捨てないでとすがるのが男性だったなんて話、今じゃ別に不思議なことじゃないですよね?
女性に対するやさしさはもちろん大切です。でも、男性ならではの強さ、逞しさ、すなわち男らしさがあってこそやさしさが際立つというものではないのでしょうか? 例えば、料理にしても同じ物ばかりでは飽きてしまうし、野球の投手も同じ球だけではすぐに打たれてしまうでしょう? そもそも恋愛の第一歩は、自分にはない個性、男らしさに裏打ちされた個性に、女性があこがれや尊敬の念を抱くことから始まると言われています。真の愛情には相手への尊敬の念が必須なのです。
果たして「面白い」や「やさしい」だけで、あこがれや尊敬の念を抱かれると思われますか? 男性諸君!
取り繕った表面的なやさしさなんていずれ飽和状態が来ます。誰もがやさしいだけの男であったら、どこにでもやさしいだけの男ばかりになったら・・・。今度は口当たりの良い柔らかい食べ物に飽きた女性達から引導を渡されるのは 「やさしいだけ」の 男達でしょう。
(2003年6月 記)
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お笑い芸人などをイメージさせる「面白くてやさしい男」。7年経った現在では「草食系男」と呼ばれるようになった。それには「人が良い」というキャラも含まれるようだ。
今でもそんな男を女が好んで受け入れているのであれば、特にアレコレ言う事もないのかもしれない。確かに、私の周りの男達を見ていても、面白くてやさしくて人の良い男は好まれている。だが、こと仕事という面から眺めると、そういう男が尊敬されているというケースは少ない。
尊敬されている男は、やはり仕事ができる男である。
直接的な危害が加わりかねない紛争や治安問題こそ、この日本においてはかなり影を潜めたものの、社会はまだまだ戦いの連続である。そんな競争社会の中で男は戦い、勝たねばならない。そうでなければ、いずれ不戦敗の時が訪れるのが世のならわしである。
先般、初期の採用面接に臨席した際も、学生時代に何かを頑張った、やり遂げた事というを紹介するコーナーで、彼らの実に7割以上の口から出たのは、学業以外のバイトやサークルの話だった。人生を決められかねない採用面接という戦い場で、頑張ったとアピールするテーマを本業以外で臆面もなく話す事に何も感じないのだろうか? それとも面接マニュアル本にそう書いてあるとでも言うのか?
真摯にまっすぐ本業に取り組んだ事こそ熱く語るべきだろうに、残念ながら彼らの多くはそれ以上のステップに進む事はなかった。
やさしくて人の良い草食系の男とは、実は意図的に戦いを避けているだけのポーズに過ぎないのではなかろうか。だとすれば、それはせいぜいメスをゲットする時だけにしたらよかろう。
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