温故知新シリーズ 11
春。毎年この季節になると見かけるフレッシュマンたち。つい、20年以上も前に過ぎ去ったあの頃の自分が蘇ります。書店のビジネス関係の書棚に、新社会人向けのハウツーものや自己啓発書の類がたくさん並ぶのもこの頃です。
中身をいくつか見てみると、決まって 「自分というものをどう表現すればよいか」 という項目が目に入ります。曰く 「欧米のように積極的にアピールすべし」 とか 「地道にじっくり実力をつけるべし」 「先輩上司にまずは可愛がられなさい」 などと様々な意見が載っていますが、いずれにせよ自分がその社会や会社、あるいは個人とどう向き合うかがポイントとなっているようです。
あなたは人に対して自分を 「出す」 タイプですか? それとも 「抑える」 タイプですか?
自分を(積極的に)出して行く人は、相手に自分の人となりを理解してもらうのに時間がかかりませんし、裏表を感じさせないので相手も安心して胸襟を開いて接してくれるでしょう。たとえ付き合いの浅い人にでも 「自分はこういう人間です」 と先に出してしまえば、コミュニケーションも進みますし、わかりやすい人間というのも存外魅力的なモンです。外交的な性格の人に比較的多いタイプではないでしょうか。
自分を(意識的に)抑える人は、相手に合わせて自分の表現をコントロールできる人です。相手に受け入れられやすく、良好な人間関係が続きやすいといえるでしょう。立ち居振舞いも大人だなと感じさせる人であり、聞き上手と言われる人でもあります。また、相手の言葉の真意を推し量れる能力も高く、それゆえ臨機応変な対応ができ、事前にトラブルを回避できる人だと思います。
私の場合は、たぶん前者のタイプなのでしょうか。おかげで人と打ち解けるのは早い方なんですが、得てして自分を出しすぎてしまうキライもあります。また、人の言葉の真意(ウラ)を読むという事が極めて苦手で、ついつい相手の言葉を額面通りに受け取ってしまい、時に誤解が生じたりもします。臨機応変に変化球を織り交ぜられない、直球しか投げられないピッチャーのようなものかもしれません。それでいて物事をわりと楽観的に捕らえてしまい、きめこまかな対応ができてなかったりします。
江戸っ子は さつきの鯉の吹流し 口はデカいがはらわたはなし
実はこれが私の悩みのタネなんですが、もっとうまくやりたいと思っても、元来の性格のせいか未だ発展途上というところです。 ・・・それ以前に、もはやこの歳で直せと言う方がムリ?
自分を意識的に抑えて相手に合わせる事もできる人は、きっと誰からも好感を持たれ、また相手の本当の気持ちも慮れる人だと思います。そんな人が私の憧れの人物像なんです。
(2003年4月 記)
・・・・・・・
これは例によって旧websiteに掲載していたエッセーモドキで、前回エントリから一年ぶりのエントリだった。 ・・・にしては陳腐な内容である。あれこれ詭弁を弄しつつ、結局、無いものねだりの嘆き節ってところだろうか。
このエントリから7年近く経った現在、依然として私は発展途上のままである。新社会人の時代はとうに過ぎ去ってしまったが、こういう事は今でも考えている。特に仕事上のコミュニケーションでは、意識はしているのだが相手に合わせた変化球がうまく投げられない。それが時としてビジネスディスカッションの枠を超え、感情的なところまで左右しかねなくなる事もある。
昔のビジネスディスカッションでは骨太の相手も多く、その理論や意見はしばしば他を圧倒する力を発揮し、それが私を含めたメンバー全員を説得してしまったという場面もあった。そんな時はディスカッションに負けてすがすがしく、その結論をメンバーは快く受け入れていたものだった。
最近はそういう相手が少なくなったように思う。そこまでの意思と情熱を持って、それをぶつけて来るという人はあまり見かけない。マネジャークラスに至っては、良く言えばロジックよりもメンタリティ優先、悪く言えば組織の理屈から初めにこうするんだという結論ありきだから議論の余地は少ない。いきおいミーティングは、検討の場ではなく伝達と確認をする場の様相を呈する。
仮に反論や対案を述べたところで、結論ありきでなので根本が変わるわけではない。だから終わった後に参加メンバーにフラストレーションが溜まるのである。特に実務担当メンバーにはあきらめの感情が色濃く残る。
まぁ、こんなケースはさておき、相手に合わせて投げる球を持っている人はすばらしいと思うし、人の言葉の裏(真意)が汲めるという人もうらやましいなと思う。そういう人はきっと感性豊かで思慮深い人なんだろうな、と。私には手が届かない存在なんだな、と。
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