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拒否でもたらい回しでもない

脳内出血を起こした妊婦(36)が都立墨東病院など7病院に受け入れを断られ、約1時間20分後、最終的に墨東病院に搬送されたものの、3日後に死亡していたという事件があった。女性は下痢や頭痛などを訴え、救急車でかかりつけの産婦人科医院に運ばれた。主治医は計7病院に電話をかけたが、うち6病院に「新生児集中治療室(NICU)が満床」などの理由で断られたという。

昨日もこれを伝えたマスコミは、一様に2年前のいわゆる「奈良妊婦たらい回し事件」と対比させ、遺族のコメントも放映していた。

その事件とは、奈良県内の妊婦(32)が分娩入院中、深夜に急な頭痛を初発症状として脳出血を発症した。ところが近隣の19ヵ所の病院へは搬送ができず、最終的に約60km離れた国立循環器病センターへ転送され、1週間後に亡くなってしまったという、今回の状況と類似したものだった。

大規模な専門医療施設が少ない地方ならまだしも、日本最大の都市で起こった事が信じられない、許せないと言うコメンテーターもいた。

確かに墨東病院は「総合周産期母子医療センター」に指定されているが、ここでも産科医不足で休日は当直医1人態勢を強いられていて、救急患者の受け入れを制限していたという。救急患者の集中しやすい他の大学・大病院も少なからず同様の状況だった事は覗い知れる。

だが、問題はそれだけではない。

産婦人科が他の診療科と最も大きく異なる部分は、1つは通常の分娩・出産は動物の自然現象の一つであり、それ自体で生命が脅かされる病気ではないと思われている点。もう1つは医師が診療・管理する対象が母体と胎児の二人分であるという点である。

だから妊娠・分娩は普通に行われ、やがて新しい生命の誕生を母親と共に喜び合うのが当然と思われている。万一、それらがきちんと叶わなかった場合は「医師側に何か過誤があったのではないか?」と疑い、疑いが怒りに変わって訴訟が起こされるのである。

福島の大野病院事件を引くまでもなく、「無事に終わって当たり前、事故が起これば訴訟」では、志を持っていたとしてもいずれやっていられなくなる。すでに産婦人科の医師数は1万人を切り、小児科医と共に「絶滅危惧種」と呼ばれるくらいの有様だ。救急を依頼されてもそこに人手もベッドも足りないのである。

そもそも重力に逆らって二本足歩行の高等生物に進化したヒトの場合、他の動物よりも出産関連のリスクは高いだろうという想像はつく。ヒトの妊娠・出産は決して至極安全なイベントではない。例えば、旧称「妊娠中毒症」、今は「妊娠高血圧症候群」の主症状は高血圧である。妊婦の高血圧は「子癇」や「脳血管障害」を起こしやすく、脳出血の原因ともされている。これも35歳以上の高齢と同様、いわゆる「ハイリスク妊婦」である。

いったん妊婦に脳血管障害が起これば、まず帝王切開による胎児の摘出、次いで母体の脳外科治療を行わなければならない。母体が死亡すれば胎児も死亡するからだが、それゆえ母体の方がより危機に晒されていると言えるだろう。時にこれを同時に行なわざるを得ないとすれば、どういう専門医師がどのくらい必要とされるか。それをもってしても救えない場合だってもちろんある。

極論すれば、だから病院はできる限りハイリスク妊婦を受けたがらないのである。その現実を単に「拒否」だの「たらい回し」だのと責めるのは誤りだと思う。また、妊婦の側も自身の抱えているリスクと出産につきもののリスクを正しく把握し、予め設備の整った医療施設にかかっておく必要があるだろう。明らかなリスクを持った人の出産は、それくらいの覚悟と準備を持って臨んでいいはずだ。

それでも、この状況を医療側から打開するための根本的なキーワードは「医師不足の改善」であり、そのためには現役医師に対する待遇面や産婦人科などを専攻する医学生への優遇措置を講じるべきだ。同時に、万一の訴訟などから如何に医師を守る体制を整えられるかにも懸かっている。国はそれを個々の医療施設に任せるのではなく、政治的に取り組んでいく事が重要だ。道路建設を遅らせても人は死なない。医療崩壊が手遅れにならないうちに強力な施策をぜひ望みたい。

末筆ながら、不幸にして亡くなられた方々に改めてご冥福をお祈りしたい。





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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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