寄席はいいなあ

明日、新宿末広亭に行くはずだった寄席見物、今朝になってなぜか、上野は鈴本演芸場に行こうと思い立った。今日が10月中席の楽日という事もあったが、末広亭よりもこちらの方が、一人当たりの持ち時間が長いゆえ、じっくり聴けるというのも私の肩を押した。

さっそく、12時半の昼の部を目指して大江戸線に乗り、一路上野御徒町駅へ。早めに到着したので、ちょいと足を伸ばして池之端に出、蓮に埋もれた不忍池を眺めた。近くには、浅田次郎作「天切り松闇がたり」でおなじみの鰻屋「伊豆栄」の黒いビルが建っている。もう30年以上前も昔になるが、御徒町に従弟がいた時分、二人でよくここへ来てはクチボソやタナゴを釣っていた。それらは、やがて後から飼ったミドリガメのエサと成り果てたけど。

鈴本のある上野広小路と来れば、天ぷらの「天寿ゞ」だ。ここは二度ほど両親に連れられて来た記憶があるが、やはり遠い昔の事だ。ランチタイムに来るのは初めてだが、カウンターの背後の漆喰や品書きの木札などはあの頃のままだったのが嬉しかった。さっそく特上天丼を注文。

開店10分後の入店だったが、それでも私が口開けの客で、まだ揚げ油の温め中だった。やがて立ち昇ってきたゴマ油の匂いが心地よく鼻をくすぐり始めた頃、目の前でご主人がエビ、キス、アナゴ、ナス、ししとう、それにかき揚げと手際よく揚げていった。ゴマ油で揚げているのに衣の色は薄い。しかしこれが天丼用のツユに浸され供されると、むしろ黒に近い濃い色に変っていた。これこそ私の大好きな天丼の色、でもちっともしつこくなかったので、ものの数分で腹に収まってしまった。この味と満足感で1800円なら納得だろう。

喫茶店で眠気覚ましのコーヒーを飲んでイザ出陣。木戸銭2800円也を払い、エスカレーターで3階へ。月曜日の昼日中、さぞやガラガラだろうとタカをくくっていたが、これが大間違い。280席ある客席の優に9分入り以上だった。しかもそのほとんどは爺ちゃん婆ちゃんである。これでは空席を探すのも一苦労だ。しかし、よく見ると皆同じお茶のパックやペットボトルを持っているので、それが団体客だという事はすぐに判った。

途中入場の場合は、その演目が終わるまで席に向かわずに後ろで待機しておくのが寄席のマナーだ。私は演目の切れ目を待って前方の席へ移動し、高座の左側、前から5番目あたりに座った。その後、演目途中お構いなしに席に着こうとする輩(これがまた年配客というところが情けない)がいて、そのたびに前座さんがめくりの前で待機する。客席が落ち着くまでは演者が出て来ないシステムだからである。私の前方でも奥に入りたい客とそのために一旦席を立つ客とで演目中の高座が見えない事があった。江戸っ子はこれを「ヤボな客」と笑うが、自己中は何も若者だけじゃないんだと改めて認識した次第。

昼の部はたっぷり4時間、気合の入った若手の落語や大ベテランの漫才など14組が出演し、賑やかに楽しませてくれた。変りダネとしては、日本に2人しかいないという三味線漫談の三遊亭小円歌の40代後半とは思えぬ艶っぽさ、また76歳と86歳のドツキ漫才コンビ、あした順子・ひろしに大いに笑わされた。

落語では橘家圓太郎古今亭志ん輔が印象に残った。また三遊亭金馬(御年79歳!)に「大正テレビ寄席」「笑点」出演当時の面影を垣間見た。ネタの「目黒のサンマ」も十分面白かった。反対にこぶ平改め林家正蔵は、小噺こそ父親三平譲りで小気味良かったものの、肝心の落語は相変わらずのイマイチぶりだった。昼の部のトリは、朝之助から昨年襲名した春風亭柳朝で、その良く通る甲高い声で博学の才をいかんなく発揮していた。

久しぶりに大満足&余韻に浸った帰り道だった。これで2800円は絶対安い! 

それにしても生の演芸はいい。ライブは客席と演者の一体感が一番とよく言うが、まさにそうだった。今回のようにマトモに寄席に行ったのは初めてだったが、こりゃ病みつきになりそうだ。彼らの話芸は寄席の場でこそ観客に伝わってくる。お互いが同じ空気を共有しているのに加え、演者からのアイコンタクトが強烈なのだ。これはTV画面の比ではない。私も何度もアイコンタクトを受けたが、その都度演者との一体感を覚えた。そして間の取り方と時折挟む現代風のギャグも演出効果に一役買っている。

そんな話芸を研修に役立てたくて、その観察のために寄席へ来たというのが本音だったが、演者と客のこういう関係は間違いなく研修トレーナーと受講者の間でも成り立つと確信できた。当たり前の事だが、まだ具体的な中身までは把握できてはいない。もとより、そんな簡単に盗めるワザであろうはずもない。でも、こうなったら観るだけ観てやれ。明日は新宿末広亭に行ってみよう。




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Chaie<チャイ>

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最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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