Seafood of the year!
さて、寄る年波のせいか、食事の嗜好が肉食から魚介系に移行して早や数年が経つ。デパートやスーパーでの食材の買出しもそうだが、特に研修ツアーで訪れる地方の店はもっぱら魚介料理店である。しかもそこでこれだと言える店に出会えば、地名がその店名に置き換わって仲間内で呼称されるようになる。曰く、札幌ならぬ「揚子江」、盛岡ならぬ「ながさわ」、仙台ならぬ「みのむし」、金沢ならぬ「くろ屋」、岡山ならぬ「岩手川」、福岡ならぬ「五条八島」、鹿児島ならぬ「さかなちゃん」という具合である。
そんな魚介類との濃い付き合いの中で、いつしか目からウロコとも言うべき発見が多々あった。それを年代順に思い浮かべた時、図らずも「Seafood of the year!」がエントリーされた。
2005年は瀬戸内の春の味覚の王様「鰆(サワラ)」だった。鰆と言えば、小学生自時分の給食のレギュラーメンバーだった「鰆の竜田揚げ」が思い出されるが、そのパサパサした食感が大嫌いだった。その鰆を刺身で食せば、何とトロに負けず劣らずの旨味と脂の乗りが味わえると知ったのは、実は漫画「築地魚河岸三代目」だった。
それを知ったからには、早速6月の研修の担当会場を強引に岡山にしてもらい、ちょっと時季外れだったかもしれないが初めて食した。さすがに旬の時季よりは味が落ちていたとは思うが、それでも翌年春に期待が持てる感触が得られたのを覚えている。そして満を持して翌春の「岩手川」、旬の鰆の刺身は文字通り絶品だった。この店では30センチ超級の生のノドグロとも出会えた。もちろんそれも絶品だった。
2006年は盛岡「ながさわ」で出会った「焼きカゼ」だ。三陸の生ウニをトコブシの貝殻に盛って焼いたもので、それを何とスプーンですくって食べるという逸品だ。ここの氷に盛られた刺身は、今まで見てきた刺身の中でも最も美しい。今のところ日本一と言ってもいい。それだけでも行く価値のある店だが、この焼カゼが日本酒をさらに進めてしまうのだ。同僚曰く、この焼カゼを握り込んだ「焼カゼおにぎり」も絶品だそうだ。
2007年はマグロの幼魚「よこわ」だ。その出会いは意外な事に、たまたま入った京都・先斗町の路地裏にある居酒屋「しし蔵」だった。実はその店で、よこわよりも先に気に入ったものがあった。それは小上がりの京間の畳とちゃぶ台である。大人2人が囲むにはちと狭いものの、それでもこれがなかなかにいい風情を醸し出している。京都にいるんだ感バッチリである。
そんな店で店主から勧められたのが「よこわの刺身」だった。マグロの幼魚と言うだけあって、中トロと赤身が交じり合った絶妙のバランスがなんとも言えず、奥播磨の純米吟醸と見事にマッチした。肴も雰囲気も非常に気に入ったので、今年の春にも同僚数人とわざわざ訪れたほどである。
そして今年、2008年は何と言ってもアジの刺身だ。アジと言っても大分の「関アジ」や鹿児島阿久根の「華アジ」といったブランドアジではない。事の発端は初夏の静岡での回転寿司だった。帰りの新幹線までの数十分間に夕食代わりにカッ込んだんだが、その時に見たマアジの握りが妙にキレイに輝いていて、思わず手が延びた。食べてみるとこれが脂が乗ってウマいの何の! この瞬間、ほとんど開きかタタキでしか食べて来なかったアジの「刺身」にズッポリハマッたのである。
その後のツアーでも、行く先々でアジ刺があれば必ず注文しては堪能した。中でも金沢「くろ屋」の薄く引かれた姿造りは、脂の乗った厚切りの刺身とは一味違った新鮮な驚きを与えてくれた。
そして今年はもう一つ。仙台「みのむし」で出会った、日本一の閖上(ゆりあげ)産の赤貝もまさに絶品だった。あの見事な身の厚さと甘さが、豊かな歯応えと共に今も脳裏に焼き付いている。
今年予定されていた研修ツアーは、9月でひとまず終了である。次回は、社長交代が昨今ウワサされる中、来年も今のままの組織だとすれば1月からだ。どこに行くかは知らないが、予期せぬ驚きと喜びの出会いを楽しみにしている。
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