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神の子撃沈

レスリング60kg級で北京五輪を目指していた「神の子」山本”KID"徳郁選手(29)が、全日本選手権準々決勝で井上謙二選手(30)にわずか16秒で巻き投げを食らいフォール負けした。おまけに右ひじ後方脱臼で全治3~4カ月のケガを負った。

K-1で一世を風靡しスターになったKIDが、父の意志を継いでオリンピック日本代表を目指して再スタートした直後の大会だった。だが、そこにはアマチュアレスリングならではの困難な壁があったようだ。

井上選手の投げ技がモロに決まった最大の原因は、両腕のタトゥーだった。それを隠すために前腕部をテーピングで覆って臨んだことが災いしたという。恩師の高田裕司・山梨学院大監督は「テーピングをしていなかったら、投げがすっぽ抜けた可能性もある」と惜しんだ。

私も前々からKIDのタトゥーは気になっていた。K-1のようなショー的プロ格闘競技ならタトゥーもファッションのひとつで問題はない。須藤元気選手も背中に大きな鳥か翼のタトゥーを入れている。だが以前、プロボクシングでタトゥーを入れた選手の選手資格が問題になった記憶がある。ましてやアマレスともなれば物議を醸さないワケがない。

前腕部のテーピングは、例えて言えば腕にまわしをつけて相撲を取るようなものじゃないか。投げ技や関節技の引っ掛かりを作り、スベリ止めを与えてあげてるようなものである。異種格闘技の試合で柔道家が道着を脱ぐのは、パンツ一丁のプロレスラーに対してあまりに不利となるからである。

プロ格闘家ゆえ許されていたタトゥーが、自らを苦境に落とす原因になろうとは皮肉なものである。だからと言って、それを理由に志を曲げる必要は無い。どんなに険しかろうと、そこに道がある限り、歩くのは本人の自由である。

また、プロの格闘技ではパンチやキックといった打撃が許されている。いちいち組んだり投げたりするよりも効果的だし、もともとアマレスのようなポイント制はない。選手は初めからKO狙いで臨むから、当然有効な攻撃を選ぶだろう。事実、KIDの持ち味もそのパンチ力にあった。

だがアマレスは打撃はご法度、グラウンド技でポイントを積み重ねていく競技である。ブランクの長かったKIDには、このギャップこそが想像以上に高い壁になっていたのではなかろうか。昔取った杵柄程度では到底埋められないレベル差だっただろう。

とは言え、まだ北京五輪代表への道が完全に閉ざされてしまったわけじゃない。一縷の望みがあるうちは彼もあきらめはしないだろう。報道では、全日本選手権の8強入りで出場権を掴んだ6月の全日本選抜に向け、左腕一本でも練習を再開するという。

キリスト同様、復活するのも「神の子」に課せられた宿命である。



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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコースティックギターやウクレレを弾いて70年代フォークを弾き語ったりするのが大好きです。遂に40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2などの弦楽器に囲まれる生活となって幸せです(^^)

もうひとつの大好きはコンパクト欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経て2010年から「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

そしてさらに10年経って取り巻く環境も変化し、4枚ドアとペーパー息子のために安全装置付きのクルマの必要性が。偶然出会った「MAZDA3 FB 20S Burg-S PMG with SIG-S」を2020年から愛車に迎えました。

現役時代は某企業でプロフェッショナルな社内研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、2nd Stageは頼れる薬局のOYAJIを目指したいとDgSで張り切ってます。

2013年から膀胱がんサバイバーを継続してます。無病息災よりも一病息災くらいがちょうど良いのかもしれません。

とか言ってたら、2020年に肝がん発生。予防接種からのHBV感染〜暴飲暴食からの脂肪肝〜部分的な肝硬変と来ていたので特に驚きませんでした。最期は肝臓だなと覚悟も決めてたし(^^;)

幸いこれも早期で表層だったため、切除手術を経て無事に終わりました。これで「ダブルがんサバイバー」の誕生です(^^)

愛と情熱を持ってはっきりモノが言える「熱きガンコジジイ」になりたい!

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