芸人と呼んではいけない

ワイドショーで、今話題の「ROOKIES」の作者、森田まさのり氏の最新作である「べしゃり暮らし」が人気を博していると紹介されていた。このマンガをひと言で言えば、お笑い芸人を目指す高校生の物語である。

お笑い芸人と言えば、昨今の彼らを見ていて思う事がある。バラエティ番組などで司会をしている「芸人」たちの本来の看板ネタは何だったか、が記憶にないのである。

例えば、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン、くりぃむしちゅーなどが、後輩の若手芸人を番組内でイジる姿はさんざん見ているが、芸人として芸をやっている姿はほとんど見なくなった。そもそも看板ネタなどあったのだろうか?

これが現代のTVを中心にした芸人の世界である。新人はもとより、ローカルで受けていた芸人、今イチブレークしきれない芸人などが、なぜか東京進出と言って深夜番組あたりに出始める。そこで人気が出れば、先輩芸人などのレギュラー番組に抜擢され、イジられながら人気や知名度を上げていく。それを「メジャーになった」と言うらしい。

芸人である彼ら彼女らに一発芸はあっても、芸を突き詰めていくという意志はほとんどない。彼らの夢は、TVに出まくって全国区で有名になり、カネと人気を手に入れ、レギュラー番組や自身の冠番組を持つ事だそうだ。つまり、「芸人」はTVの世界に出るための方便であり手段でしかなく、「芸」で身を立てる事より、目指すはさんま、紳助のポジションなのだ。ネタは、あくまでも自己アピールのためという意味でしかない。

古くは「大正テレビ寄席」、大喜利がメインだが「笑点」、他にも数々のレギュラーの寄席番組があった。その世代の人々は芸人の「芸」に笑い、そんな「芸人」に惚れ込んだのである。

1960~70年代は、夢路いとし・喜味こいし、人生幸朗・生恵幸子、てんやわんや、コロムビア・トップライト、そしてやすきよなどの漫才全盛期だった。一方で、漫画トリオ、てんぷくトリオ、ちゃんばらトリオ、ドンキーカルテット、ドリフ、コント55号などのコントも花盛りだった。そのどれもが忘れられない強烈なキャラとネタを放っていた。

芸人が極めた本業の「芸」はすごかった。とっくに手アカの付いたはずのネタを何回見ても、その都度安心して大笑いさせられるからだ。対して、今の芸人のネタはすぐに飽きが来る。私などは、たまにお笑い番組で若手芸人をを見てもほとんど笑えない。昨年M-1グランプリで優勝したサンドウィッチマンのネタも3回目で飽きが来た。一昨年優勝したチュートリアルなどは得意ネタすら覚えていない。

芸人たるもの、老若男女に受けてこそホンモノだ。受けるからといって、目先の若い連中の感性だけで勝負していると「使い捨ての芸」にならざるを得ない。だから、使い捨てる芸が枯渇しないうちに有名になって、安定したポジションを得るというのが今の芸人の勝負ポイントなのだ。もしもレギュラーMC界というものがあれば、芸人などという回りくどい道なんて選ばずに、最初からそこに殺到しているに違いない。

近年、芸人を目指す若者が激増している背景には、万人が認める抜きん出た芸術的才能がなくてもとっつきやすい、すなわちプロとアマの壁がかなり低い世界となった事に加え、オーディションやコンテストなど世に打って出る環境も整って来たからに他ならない。もちろん、それが若手芸人の思惑の全てだとは思わないが、ほとんどがそう見えるというのも残念ながら事実だ。自分の芸を披露する事よりもバラエティ番組の片隅に座っている事の方がよっぽど嬉しそうに見えるからだ。

結局、今のお笑い芸人と先人達との違いは「芸人」と「芸」というものに対する認識の違いに他ならない。覚悟の問題と言い換えてもいいが、そもそも始めから目指す方向が違うのだからそこに意味はない。芸人は単にキッカケの呼び名でしかなく、芸はそのためのツールなのだから、その場でだけ受けるキャッチフレーズ的なもので十分なのだ。芸人も安くなったものだ。

否、そもそも彼らは「芸人」ではなかったのである。




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COMMENT

昨今のアナウンサーも怪しいですね。字は読めない、一般常識はない、さりとてアナウンス技術も心もとない。
ひとえにこれは採用する側の選考基準がアナウンサーではなく、局タレをイメージしている事に問題があると思ってます。

同感ですね

「司会者」って今はもうお笑いの人に占領されている、たしかに局アナじゃ面白みがないのかもしれないけど・・・
クイズ番組の司会者なんかはもっと賢そうな人の方が良いですよね?
吉本がお笑い学校を作って芸人の大量生産をしてることもろくな芸が育たない原因かな?

それにしても漫才ブームの時、明石家さんまは「小林繁のものまね」しか持ちネタ無かったのにねぇ

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最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

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