感情と秩序6 ~散るべき花と咲くべき花

本日、京都で筆おろしとなった新しい研修が予定より延びたため、新幹線も予定より30分遅れとなった。これが不幸の始まりだった。いつものように窓側の席で熟睡した頃、異変を感じて目が覚めた。初めはどこかの駅にでも着いたのかと思って、あたりを見回したら景色は真っ黒。なんと浜松と掛川の間で止まってしまったのだ!

やがて通路を男女の乗務員達が後ろの車両に向かって走り抜けて行った。どうやら何者かが走行中のドアを非常用コックで開けて飛び降りたらしい。その場に30分近く止まった後、徐行運転をしながら静岡駅まで辿り着き、警察による実況見分が始まった。今、その列車の中からこのエントリを書いているが、当分動きそうにない。今日はこんな事じゃなく、是が非でも書かねばならない事件があるのだ。

これで6回目のエントリとなる光市母子殺害事件である。

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「感情と秩序」(2006年4月19日)
「感情と秩序ふたたび」(2006年6月21日)
「何度でも『感情と秩序』」(2007年6月27日)
「感情と秩序4 ~セカンドレイプ」(2007年7月27日)
「感情と秩序5 ~心の底の言葉」(2007年9月21日)


本日午前、当時少年だった被告(27)に対する差し戻し控訴審の判決公判が広島高裁であった。

差し戻し審で被告側は、弥生さんについては「自殺した母親のイメージを重ね、甘えたいとの気持ちから抱きついたら抵抗され、誤って死なせた」「生き返って欲しいという思いから強姦した」、夕夏ちゃんについては「首を絞めた認識がない」と主張した。

その主張に対し、楢崎裁判長の「起訴後、6年半以上経過してから新供述を始めたのは不自然。死刑回避のための虚偽供述で、酌量すべき事情を見出す術がなくなった」と指摘した。弥生さん殺害について「右手で首を押さえて死亡させた」とする被告側の主張を「遺体の状況と整合しない」と退け、強姦については「性的欲求を満たすためと推認するのが合理的。女性が生き返るという発想は荒唐無稽で到底信用できない」と、計画性も認定した。夕夏ちゃん殺害の殺意を否認する供述の信用性も否定した。

差し戻し審での被告の態度については「自分の犯した罪の深刻さと向き合うことを放棄し、死刑回避に懸命になっているだけで、遺族への謝罪は表面的。反省謝罪の態度とは程遠く、反社会性は増進した」と述べ、弁護側が主張した情状面について「斟酌する理由は微塵もない」と述べ、「18歳になって間もない少年であると考慮しても極刑はやむを得ない」と無期懲役とした1審の山口地裁判決を破棄、求刑通り死刑を言い渡した。

本村洋さんら被害者遺族はさぞや嬉しかっただろう。それは死刑という判決もさることながら、いきなり方向転換した被告と弁護団の主張とも言えない主張を真っ向から断罪する判決だったからだ。

そもそも、生存している当事者として唯一真実を知っている被告が、それまで認めていた事実を突如として曲げ始めたところから、この悲劇の続編が始まった。きっかけは弁護団による誘導だったかもしれないが、そのうち現実と空想とが入り混じり、死刑への恐怖心とも相俟って、ついにはそれこそが真実だと思い込んだ。それは、彼に限らず歪んだ成長をした人間が逃げ込む世界に他ならない。

もしもそれが一片でも認められるような事があったら、もはや社会正義というものは成り立たなくなっただろうと思う。今回の裁判長の判断は、我々法の素人から見ても至極当然というべき内容だ。という事は、ここに来てようやくマトモな判断力を持った裁判長が現われたという事でもある。

来月11日の亡き娘の誕生日を待たずに、出来るだけ早く墓前に報告に行きたいと言う本村さんの哀しくも切ない言葉。結果として、被告を含む3人の命を奪う事になり、それは社会の損失だと語った冷静沈着かつ毅然としたその態度。それらを少なくとも私は一生忘れない。

事件から実に9年の歳月が経ち、ようやく今日の判決を迎えても、彼の負わされた傷が癒える日は来ないかもしれない。だが、私は敢えて言いたい。今度はあなたがあなたの心と戦う番だよと。せめてあなただけでも幸せになる事で、この悲劇を見返してやって欲しい。咲かない花なんてないんだ、と。




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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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