大助・尚子
昨夜は前王者との指名挑戦(同級1位との対戦義務)タイトルマッチだった。結果は三者三様の判定の引き分けで2度目の防衛に成功した。33歳6ヶ月の彼は、自身が持つ世界王座の日本人最年長防衛記録も更新した。同じ選手に過去2度負け、その後2度勝った。彼は高みに立つ事によってさらなる実力を発揮するタイプなのだろう。また、それを発揮するための凄まじい努力と執念があったに違いない。
試合は、例によって全身を使って攻める変則ボクシングの内藤有利に進んだかにも見えた。8回の公開ジャッジで劣勢を知った前王者は、直後の9回に猛攻に出たが、クリンチを振りほどこうとした際に相手を投げ飛ばし、内藤選手は苦痛の表情を浮かべた。不運にも大毅戦に続いて投げを食らったワケだが、2戦連続は珍記録かも。
それにしても、ピークを過ぎたと言われる年齢での快挙は無条件で賞賛に値する。
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明けて今日は、北京五輪最終選考会である名古屋国際女子マラソン。名古屋勤務時代に自宅前の道を猛スピードで選手が走り抜けて行った光景を思い出す。すでに土佐礼子(31)、野口みずき(29)両選手の内定・確実が出る中、事実上、残り1つの代表獲得に注目の高橋尚子(35)ほか、大南敬美(32)、原裕美子(26)、弘山晴美(39)の歴代優勝者のそうそうたる顔ぶれがしのぎを削る「勝負あるのみ」レースである。
名古屋にしては珍しく無風状態の中でスタートした。ところが展開は無風どころか全く逆だった。早くも序盤9kmあたりで高橋尚子が遅れたのが波乱の幕開けだった。その後は有力選手のダンゴ状態で18kmまで来たが、25kmでは15人ほどに、30kmでは6人に絞られた。
勝負どころの32kmでスパートしたのは、初マラソンの中村友梨香選手(21)だった。同じく初マラソンの尾崎好美選手と加納由理選手を置き去り、そのまま2時間25分50秒で優勝した。高橋尚子選手はTV中継終了時でもゴールまで2km地点を走っていて、結局27位に沈んだ。
30代でも強い選手の多い女子マラソン。一概に年齢のせいにはしたくないが、有力選手が揃って討ち死にし、代わって新進気鋭が勝ったという事に時代の転機を感じずにはいられなかった。
だが、マラソン競技は野球などと異なり、速球投手だったベテラン選手が投球術で補えるというものはない。力の衰えが即、選手寿命につながる苛酷な競技である。今日を区切りに引退するベテラン選手が出てもおかしくはない。
思えば、高橋尚子選手には何度も最高のシーンと競技者スピリットを見せてもらった。彼女の性格から、これで引退なんて事はないとは思うが、たとえ第一線から退く事になったとしても彼女が示し続けて来たものにいささかの曇りも生じない。敬意を込めてお疲れ様と言ってあげたい。
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