料理を殺した料理店

会社の前にあるランチも出していた喫茶店が半分ほどに縮小し、そこへ新規開店した魚介系居酒屋へランチに行ったのが半月程前だったか。ランチの海鮮丼の具の種類は多目だったものの、大きな椀のわりに味が薄く具も少ない味噌汁付きで¥980の価格がチト不満だった。

その後、改修工事みたいなものでしばらく休んだようだったが、私の久しぶりの出社の今日、同僚の言ってた言葉がふいに脳裏をかすめた。「ランチの質と値段には賛否はあるでしょうが、魚の味を謳った店ですから夜は期待できそうです」

で、工事も終わって再開したようなので、その同僚と行ってみた。テーブル席が3つ、カウンター席が5~6席程の小さな店である。カウンターと厨房に板さん3人、フロアには40代後半くらいの細身の柴田恭兵風のオーナーらしき男性と40代前半くらいの女性店員がいた。早い時間だったせいか、客は我々2人が口開けだった。

本日のオススメを書いた紙を示しながら、その女性店員が言った「刺身は別々に注文するよりも盛り合わせがお得ですよ」の言葉通りに盛り合わせを注文。さらに自家製塩辛とアナゴの白焼きも注文した。その間、その女性に向かって「魚の煮物も薦めて!」というオーナーの指導(?)の声もしっかり聞こえたが。客の前でOJTかい!

出てきた刺身は文句なく高水準。素材はもちろん、カウンターでもくもくと仕事をしてる初老と若い2人の板前の仕事もきちんとしたものだという事は良くわかった。その他の料理の質も決して悪くない。だが、その刺身に合わせるよう注文した燗酒からケチが付き始めたのである。

あろう事か、紙パック酒が厨房入口に持って行かれたのを私は見逃さなかった。やがて2合徳利で出て来た酒、オーナーはお燗の温度を気にしていたが、私の気持ちの中ではとっくにその酒が冷え切っていたという事は想像すらしていなかっただろう。

気が付くとそのオーナーは、タバコを吸わない我々しかいないにも関わらず、厨房と客席の間の荷受けカウンターに灰皿を置いてタバコを吸い始めているではないか! しかもそれに先立って、グラスに氷を入れ焼酎を注いでチビリチビリと飲み始めているではないか! 当然、タバコの煙がこっちにも漂って来る。時間はまだ18時半である。

今度は、オーナーと夫婦かどうかは知らない女性店員が、我々の眼と鼻の先にあるカウンターの端席に入口の方を向いて座ってしまったのである! それは我々の後から来た男女の客がカウンターに座った後でもそうだった。もちろん、初めての客でもある我々と世間話の一つもしていない。料理を出す時と下げる時の「失礼します」以外、とにかく言葉がない。今後、店にとって強力な贔屓客になるかもしれない我々なのに。

これはいったい何なんだ? あんたらは商売のド素人なのか客をナメてるのか、どっちなんだ?

同僚は背中越しだったが、私の位置からは全てが間近に見えていた。その同僚も、念のため今日の夕方に予約の電話を入れた時の応対が実にそっけなく、言葉も鷹揚だったと後で呟いていた。

料理屋にとって素材の質は大事だ。けれども素材の味を生かしたウマい料理さえあれば、それでいいってものではない。それを引き立てるのは店の雰囲気であり、接客が醸し出す空気である。それらが揃ってこそ、客はまた来てみたいと思うのである。

優良な料理を自らが殺してしまった料理店を見た。



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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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