2つ目の有終の美
住み慣れた(?)16Fのオフィスから3つ下の13Fへ、部署丸ごとリロケーションするのだという。しかも引越完了日が第4週月曜日だそうだ。そうなると、前週までびっしり出張予定の私は、必然的に荷造りを1週間以上前に済ませておかなければならない。やれやれ大変な事になっちまったわ。
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本拠地札幌ドームで1勝1敗、ナゴヤドームで2連敗し、背水の陣となった日ハム。昇り竜中日に挑むは鉄腕エース、ダルビッシュ有! 昨年のシリーズ第5戦から、ポストシーズンは本拠地4連勝中で、今日敵地で初めて勝てば5連勝だ。シリーズ最多タイの13奪三振で威圧した第1戦の再現を狙い、是が非でも札幌ドームへリロケーション、じゃなくてリターンだ!
そのダルビッシュ、犠牲フライで1点を失ったものの、8回まで11三振を奪う好投を見せた。だが、もっと驚かされたのは中日先発の山井大介投手だった。なんとなんと、日ハム相手に8回までパーフェクト・ピッチングだ! この段階でも日本シリーズ新記録で、当然の事ながら観客の期待はもはやパーフェクト優勝以外にない、と思ったその矢先にまたもやドラマが起こった。
落合監督は9回初っぱなから岩瀬に替えたのである! 場内は割れんばかりの騒動である。それでも情を殺した非難覚悟の交代劇。一部のスキも決して作らず、勝利の確率にだけ徹した監督采配だった。中日にとって53年ぶりの日本一は、そうまでしても断固掴みに行かねばならない悲願だったのである。
であるにせよ、交代はせめてヒットを打たれた後でも良かったんじゃないかと思う。大舞台での完全試合なんて、まず出会えないと言っていい程の大チャンスだ。結末への興味はもちろん、山井自身もチャレンジしたかっただろう。もし達成できたら、ピッチャーにとってこれほど自信となる勲章もあるまい。楽天の野村監督も「10人の監督がいたら、あの場面では10人とも替えないだろう」と言っていた。今となっては所詮、「たら、れば」であるが、いかにももったいない。私だったら勝負の「現実」より「ロマン」を選んだだろう。
最少得点の1点を守り抜いた山井・岩瀬の継投完全試合も初の快挙だったが、シリーズMVPに輝いた中村ノリは、自分で播いた種とはいえ、背番号のない育成選手から今シーズンを始めた末の栄冠だった。お立ち台で涙に暮れた気持ちが良くわかる。スタンドで奥さんも涙していた。
ひと言、優勝監督インタビューのアナウンサーへ。何とか落合監督の涙腺を刺激しようとするのは結構だが、皆が一番聞きたかった「山井交代のワケ」をなぜ訊かない? 自分まで舞い上がってどうすんだ! お前はプロだろが!
こうして少々間延び感のあった日本シリーズは、セ・リーグ2位の中日がパ・リーグ優勝の日ハムに去年の雪辱を晴らす形で終わった。私にとってF1ブラジルGPに続いて2つ目の「記録と記憶と歴史に残る一戦」だった。スポーツにおける有終の美は、いつ見ても気持ちのいいものである。
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