リスクと感情論
昨日は全漁連会長らと官邸で面会し、処理水放出の安全性や風評被害対策について説明し理解を求めたが、これに対して福島県内の漁業関係者らは「約束は破られた」「周知が足りていない」といった怒りや不安の声が聞かれた。
問題とされているトリチウム(三重水素)は自然界にも水道水にも存在し、その濃度は0.1〜1.0Bq/Lという微量で、これはWHO基準の1万〜10万分の1の濃度で十分に安全なため誰も気にする事なく問題にもされていない。
ALPS処理水では処理直後のトリチウム濃度は14万Bq/Lとなるが、これを施設内で1000倍に希釈し140Bq/Lとして海洋放出すると直ちに海水で薄まって0.1~1.0Bq/Lとなり、自然界や水道水の濃度と同じレベルとなる。例えれば学校のプールにインクを垂らしてそのインクの濃度や水の安全性を問うようなものであろう。
これをIAEAの調査報告書の結果と共に政府やマスコミがキチンと伝えれば、少なくとも安全性に対する懸念はかなり払拭されるはずである。ましてやそれ以上のトリチウムを含んだ処理水を大量に海洋放出しまくっている中国や韓国にあれこれ言われる筋合いも無かろう。
だが、福島県の漁師は憤る。
「大臣や首相は一部の漁業関係者と話すばかりで、最後まで多くの地元漁師らと直接話して理解を働き掛けなかった。『関係者の理解なしにいかなる処分もしない』という政府の約束は破られたと思っている」
これは肝心な処理水の科学的安全性に対する理解よりも自分達のプライドを重視した発言と言っても過言ではない。はっきり言って感情論そのものである。安全性の議論で科学的根拠よりも感情論を語っては相互理解は遠のくばかりだろう。
「漁業関係者にとって処理水の放出はデメリットばかりで、買い控えは起こる」と風評被害を懸念する声も多い。
言うまでもなく風評被害は大きな問題である。これには感情論が関わるので、直ちに全国民が理解納得出来るとも考え難い。でもそれは何かの策さえ講じれば一瞬で雲散霧消するものではない。これから時間をかけて解消させてゆくべきもので、それについては消費者である国民も政府も真摯に向き合うべきなのは論を待たない。
日本サーフィン連盟福島支部長は「安全性については議論が尽くされている」としつつも「離れた場所からサーフィンをしに来る人も多い。そうした人に対する周知は足りていない」と。それを言ったらサーフィンだけでなく、海水浴やダイビングなどどこまで対象を広げれば良いと言うのか。安全性を理解したのなら、まず連盟がその周知に尽力すべきではないのか。
たとえ天変地異のせいだとしても、安全なはずだった原発に大事故が起き、廃炉までの数十年間に大量の冷却水が生じるという事実はもはや変えられない。
だとすれば、残念ながらその後処理を可能な限り迅速に進めていかなくては、再び将来的に大きな被害に繋がるリスクを抱え続ける事になる。今回の処理水海洋放出も可能な限り安全性を確保しつつ迅速に進めるべきである。それを決断した政府は評価に値する。
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