ベホマかザオリクか

その日は、何の予告もなく突然やって来る。

いつもの朝、いつものように出勤時間が訪れ、これまたいつものように少し憂鬱な気分を抱えながらリビングから階段を降り、玄関でショルダーバッグを抱えて靴を履く。ドアを開けて外に出てカギを掛けるまでが第一段階。いつもならここで何かしら鈍痛を感じ始める。まるで予兆のように。

駅に向かう道、およそ250mの間でその日の膀胱痛の程度が窺い知れる。歩行中、持続する股間の鈍痛ならまだマシな方で、酷い時は膀胱が不随意収縮を起こし、思わず立ち止まる程のツーンとした針刺し痛に見舞われる。数秒も経つと痛みが沈静化するのでまた歩き出すという繰り返し。

地下鉄に乗っている間も針刺し痛もしくは鈍痛が断続的にやって来て、それを紛らわすように歩行時と同じように深呼吸を繰り返す。乗り換え駅でいくつかの階段を上る時、そこでも針刺し痛が断続的に現れたりする。それが怖くて歩行速度は極端に遅くなり、人々にどんどん追い越されて行く。ようやく乗り換えホームに辿り着き、電車を待つ間に立ち止まっていても周期的に痛みが襲って来る。「今日もやっぱりダメか」と諦めの境地に至るのもこのあたり。

今日の痛みの程度が明らかになり、職場の最寄駅から3分もあれば済むはずの店までの道に、倍の時間を掛けてチンタラ歩いて、やっとこさ到着する。白衣に着替える前にまず排尿。最後に家で排尿した時から1時間弱、このインターバルで尿意を感じるというのはまぎれもない頻尿である。

家にいる時でも、起きている間は概ね1時間に一度、就寝中は2〜3時間に一度の頻度である。排尿痛もハンパない。尿が尿道を通る際に無理やり拡げられるような痛みが急激に大きくなり、その痛みに思わず唸ってしまう頃に排尿に至る。それでも日中は服用薬の効果か、排尿痛はまだマシな方である。だが排尿が終わっても十分な膀胱の弛緩時間を置かないと不随意収縮を起こすので、しばらく便座から腰を上げられない。

かくして私の小用は5分近く要する事になる。こんな状態なので、排尿はどこでも座位が必須となってしまっていた。つまり、個室のある洋式トイレでしか用を足せないという事である。

仕事をしていても1時間も経つと尿意を覚える。仕事がいろいろ忙しいと2時間以上延長する事もあるが、そこまで経ってから排尿すると、うっすらと血尿になるようだ。ただそれは腫瘍増殖時のような酷い血尿ではないから、膀胱内の炎症による出血だと察しがつく。イスに座る時は片尻座りがせいぜい、むしろ立っている方が楽な時がしょっちゅうだった。

膀胱機能改善剤を2種類、鎮痛剤も2種類を毎朝服用し、鎮痛剤2回分をポケットに入れて家を出るのが習慣。痛みは午前中がキツく、午後以降は徐々に慣れて、夕刻以降はキツさはさほど感じなくなる。針刺し痛が出た場合は、棚の影で膝に手をついた中腰の格好でやり過ごすしかない。

ほぼこれの繰り返しの毎日だった。

いずれにせよ、頻尿と膀胱 and/or 尿道痛との闘いがもう160日に達しようとしていた。この間、全く痛みの出ない日が1、2回あったが、決まってその翌日には痛みがぶり返され、その度に切なる望みは儚く消え去るのだった。

・・・・・・・

そしてまさに最後のBCG傍注療法から160日が経とうとした昨日、一昨日まではいつものように大なり小なりの痛みに苛まれていたのに、その日は朝から排尿後も歩行時も全く痛みに襲われなかったのである! オマケに排尿痛もそれほどでもない。もちろん、そんな事は過去にもあった。あったけれど、結局裏切られてヌカ喜びに終わったトラウマから素直に喜べない自分がそこにいた。「どうせまた明日になれば痛みが再発するに決まってるさ」と。

でも今回は不思議とそんなイヤな予兆はなかった。それよりも、本当に嬉しい一日が終えられたので、帰りに一人利久で祝杯をあげた(もちろんノンアルビール)。まあ、また裏切られるかもしれないが、とりあえず無痛の一日を過ごせた事が堪らなく嬉しかったのだ。痛みのない事がこれほどQOLを向上させるとは、経験して初めてリアルに実感出来るに違いない。痛みが無く「普通」に歩けるというのは何とありがたい事か!

果たして、開けて今日に至っても無痛の一日が終わろうとしている。今まで二日に渡って無痛状態が続いたためしがなかった。という事は・・・おいおい、こりゃ今回はホンモノか?

持続する痛みというのは、快復に向かう時には日を追う毎にジワジワと失せていくというイメージを持っていたが、これほど突然に失せてしまうものなのだろうか? ならば5ヶ月後と言わず、もっと早くこの時が訪れても良さそうなものだろうよ。オレ、何にも悪い事してないのに。

これでまだ残っている排尿痛を覚えなくなれば今度こそ完全復活である。家でひたすらソファに横になる事も、車の座席に不恰好なクッションを敷く事も、外出時に行先々のトイレの有無を気にする事も、何より先の見えない闘いの日々を強いられる事も、この調子ならもうオサラバだ。

掛け値なしに生きる喜びが湧いて来たよ。




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Chaie<チャイ>

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最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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