At the end of summer

主治医のT先生がおもむろに机上に出したのは海外のがん治療ガイドラインであるNCCNガイドラインのコピーだった。そして目の前のモニターには切除した組織の病理診断の結果が映し出されていた。

「信頼性の高いこのガイドラインによれば、切除した組織の浸潤が疑われる場合は再切除か膀胱全摘とあります。状態からは全摘するまでもないと思うけど、病理診断からは筋肉層までの浸潤が疑われるため、再度削る必要はあるね」

どうやら、前回削った3ヶ所のうち少なくとも1ヶ所の腫瘍の根っこが残っている可能性があるという事らしい。

NCCNガイドラインは学術研修トレーナー時代に何度も見た事がある。エビデンスに基づいているかもしれないが、患者にとっては一見非情にも思える治療指針が記載されていると認識している。提示される患者もこりゃ大変だなと思っていたが、あにはからんや今度は私自身に向けられたのであった。

赴任直前に入院加療し、ようやく下旬に新天地へ赴任したばかりの身にその宣告はキツい。一人薬剤師業務と店舗事情による業務にまずは慣れ、来月からは月間コンクールの達成も狙った販売戦略も立てなければならない。エンドユーザーである地元のお客さんにカウンセリング販売を通じてお役に立つ事で顧客を獲得するという初志に加え、営利企業である会社のニーズにも応えていかなくてはならないのは社員として当然である。そのためには何より時間が欲しい。こんな所で戦線離脱するワケにはいかないのである。

「再手術(リオペ)を選択するも、まずは転移(メタ)の有無を見ておかなくては」というので早速単純CTを撮った。ここまでが21日の外来。そしてその結果が出たのがさらに一週間後の先週金曜日だった。ちなみにCT撮影は、閉塞的でやかましいMRIに比べて開放的で短時間だった。ただ頭の上で手を組んで寝ていれば機械が往復するだけ。

医学ドラマに出てくるような輪切りの連続画像で、自分自身の肺から骨盤内までを見る。最もメタの可能性が高いという肺に異常な白い影はなく、その他の組織にも認められなかった。肝の一部が硬いような所見があったが、それはとうに織り込み済みだから問題ない。

という事で、無事(⁉︎)にリオペの適応となったが、それじゃ何時やるの? 今でしょ! ってワケにもいかないので、10月上旬にスケジューリング(カレンダリングってか?)してもらった。そういえば、前回の退院の朝、ナースに「また2年位のうちに戻ってくるかもね」などとうそぶいていたが何の事はない、2年どころかたった2ヶ月で出戻るハメになったのだった。トホホのホ。

せめてもの救いはT先生による手術の予後については経験済みで、それほど悲惨な目に遭わずに済んだという前例の存在である。あれならナントカカントカ耐えられるレベルだ。それでも退院10日以上経った今も、歩行の刺激で膀胱の術創部にツーンと来るし、仕事で動いていると赤ワインも出た。さらに毎度の強い排尿痛。まるで前立腺炎の極期の症状そのもので、もしかしたら前立腺炎だと思っていた症状は、実は膀胱腫瘍の再発によるものだったのかもしれない。前立腺が腫れていたのも事実だったから、どっちのせいでもあったのかも。

いずれにせよ、前日入院、翌日オペ、経過良好なら4日後に退院という基本路線は前回と同様だという。その顛末をF店長に報告し、ちょうど棚卸しの翌週から戦線離脱の了解を得たものの、やはり再度迷惑をかける事に面目ないという気持ちばかりが先行する。実際、この現実が自分でもまだ消化しきれない。

いっその事、前々回のようにこのまま放っておいてまた腫瘍が出てきたら手術すりゃいいのではともT先生に言ってみたが、冷たい目で却下されたのは言うまでもない。ま、今回までは受け入れて再チャレンジしてみるとするか。正直な話、仕事のジャマにしかならない今の症状が消えてくれればいい。そう出来ないなら、とっとと余命宣告状態になってもいいとさえ思っている。

何度も言うが、生物は必ず一度死ぬ。個体によってそれが早いか遅いかの違いがあるだけ。あれこれあるのは残った側の話、死んだ本人にとってはそこで無になるだけ。未練があろうともその瞬間に終わりが来て無になるだけ。物理的反応による生命活動が止まるだけ。それは人間であろうが虫であろうが変わらない。いつか必ずやって来る。

私はそのように捉えているから、死を迎えるという事に特に恐怖というものを感じない。ただ、今はやれるだけの事をやっておきたいと思い、今ならまだそう出来ると思われるから、そう出来る身体への回復を願うばかりである。





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Chaie<チャイ>

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最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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