ついにこの日が
今まで幾多の結婚式・披露宴を見て来たつもりだったが、当事者の親の側に立たされると、こうも景色が違うものかと驚かされた。式場選や披露宴の内容などほとんどすべてを息子たちがプロデュース、親側は直前になってもその詳細はよくわからない状況だった。3つの仕事についても前日になって息子からの依頼メールで改めて認識したほどだった。
そんな混沌の中で当日の朝を迎えた。東京人でもほとんど知らないようなレアな都内名所見物を企てていた義弟夫婦は、何と2日も前から鹿児島から上京して私の家と会場であるランドマークタワーのホテルと連泊、私の母親と妹も同じホテルに前泊してその日に備えていた。
私はと言えば、昼に会津から帰って来た二男を車に乗せ、夕刻に仕事を終えたカミさんをピックアップしてトリプルベッド設定があった、会場とは別の横浜スタジアム近くのホテルへ前泊したのだった。そこは中華街の近く、もちろんあの「東林」でワタリ蟹の卵炒めやピーナツ餡のゴマ団子などの名物を食したのは言うまでもない。横浜でこれは外せないでしょ。
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前日の雨模様もスッキリ上がり、文字取り「本日は良いお日柄」という朝を迎えた。おまけに前日は大安だったのでホテル内はかなりごった返していたと聞いたが、打って変わってこの日は日曜日にも関わらず昼の部も2組程度で余裕のよっちゃん。こりゃヒキは強いぞ!
着慣れないどころか初めて着るモーニングにあたふたし、「これぞペンギン!」という妹の罵声に耐えつつ式は始まった。まずは控え室における親族紹介。両家合わせても30名弱という少人数だったので単に続柄と名前の紹介ではアッサリし過ぎているかなと思ったが、結局、余計なプロフィールを加える余裕はなかった。事前に確認はしておいたものの、自分ではなく息子との関係を相手にわかりやすく伝えるのは意外に難しい。間違えたりもしたし。
式はチャペル。でもここは地階。施設の都合からか、陽の差す明るい地上のチャペルではないし、両家とも別にクリスチャンでも何でもないのだが、そんな事は二人にゃ一切関係ない。どこかで観た映画のようにウェディングドレスでヴァージンロードを歩く事にこそ価値があるのだ。場内に響き渡るバイオリンとビオラの演奏やソロの賛美歌は、生であるゆえ一種神々しい存在感を生む。アルバイト牧師の手馴れたリードでつつがなく式が進み、神の御名の下に無事結ばれたようだ。
それにしても写真屋はそんなにたくさん撮ってど~すんのというくらい、ロビーの大型階段で二人にあれやこれやポーズを要求しては撮りまくるし、動画屋に至ってはその合間に両家の父母にあれこれとインタビューしては録画する。これが最近のスタイルなのだろうが、恥ずかしいやらウザいやら。今さら息子に言う事なんてそんなにありゃせんわい。
最近のスタイルと言えば、披露宴は息子のスピーチから始まり、主賓の挨拶と乾杯の後は新婦のピアノ演奏くらいが余興で、友人のスピーチや余興などは一切ない。その代わりひな壇での新郎新婦を囲んで語らったりスナップ撮影などの時間がタップリと取られていた。従来の披露宴風景に慣れているこちらとしては賑やかさが足りない感じがして、こんな事ならいっそギター抱えて飛び入りライブでもやったろうかとも思ったが、いやいや新郎の父親がそれやったらシャレにもならんわと思い留まった。
そんなまったりとした時間が多かったので、両家の主賓どころか友人席や親族席に至るまで全テーブルに挨拶回りをした。本当はそこまでしなくてもいいだろうとカミさんとも言っていたのだが、気が付けば向こうの両親がいそいそと回っていたのだからしょうがない。
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いよいよお涙頂戴タイムがやって来た。まずは新婦の母への手紙の朗読、そして二人からそれぞれの母親へ花束贈呈となった。息子を思わず抱き寄せて涙に暮れるカミさんの気持ちが伝わって少しグッと来る。それがいけなかったのか、新郎の父親だというのに両家代表挨拶を喋りながら一瞬ウルウルしそうになったり、密かに仕込んださらなるお涙頂戴ネタを見事に外し、逆にマイクを渡したカミさんのスピーチの方が私よりも笑いと絶賛を浴びるという結果となってしまった。
ここに至って私は否応なく自覚させられた。かれこれ15年に渡り研修をやって来た私は、自分でも周りからも他人よりは話が上手いと思っていたのだが、それは全くの勘違いだったのである。私は研修シナリオに基づいて効果的に受講者へ教えるスキルはあったのかもしれないが、決して話そのものが上手い訳ではかったのだ。事実、台本を必死に覚えて噛む事もなく喋り切った息子や素直な気持ちを笑いと共に語ったカミさんの方が大向こうを唸らせた。あー自己嫌悪。
ともあれ、こうして息子は嫁を貰って新しい家庭を作り、それをスタートさせてゆく。ふと息子の幼い頃の日々を回想すると、いつの間にか立派な大人になった事にさえ感慨を覚える。そして願わくば二人の歴史に長く足跡を残して行って欲しいとも。ついこの前まで自分たちの手の中にいたはずだった子供の巣立ちとは、こういうふうに突然やって来て、突然思い知らされるものなのだろうな。
今頃、新婦の父親の胸に去来しているであろう言い知れぬ寂しさを味わわないで済むだけでも、新郎の父親という立場はまだ幸せなのかもしれない。
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一夜明け、来月から就業する会社へ入社手続きに赴く。名札や社章、書類やマニュアル、おまけに白衣までごっそり受取り、その足で1ヶ月間のOJTを受ける指導薬剤師の先生の店舗へ挨拶に。話を聞くと、この先生独特のキャラに加え、仕事への取り組み方や考え方がかなりユニークで信念を伴っている事に気付いた。それが販売会社としてしっかり実績にも結びついていると言う。
よ~し、これも縁だ! 私は来月からこの先生にしっかり密着し、この先生からあらゆるものを吸収したいと思う。
私がこの仕事選んだ最大の理由である、メーカーの人間では出来なかったエンドユーザーである患者さんへ直接関わり、そのお役に立ちたいという事を実現させるためにこれは絶好の環境と言えるだろう。ここでも私のヒキは強そうだ。
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