己れの意思とプライド

福島第一原発の所長だった吉田昌郎氏が7月9日、食道がんのため58歳で逝去した。

震災翌日の3月12日、1号機で水素爆発が起きた。東電幹部からの残りの事故炉への海水注入中止指示に「今から注入中止を指示するが、絶対に止めるな」と作業員に密かに命じたエピソードがマスコミに再三取り上げらた。自ら「もう死ぬと思った」という現場で発揮された強力なリーダーシップと命懸けの作業に取り組む作業員から最後まで失わなかった信頼に称賛の声が寄せられた。

「現場で詰めろ」「被曝も覚悟で頑張れ」と言い放つ「現場」を知らない東電本店や官邸の右往左往の大混乱を見切りつつ、吉田指揮官は時に怒りを爆発させながらも職務を放棄しなかった。

「これはもうジジイの決死隊でいこうか」「私はあの時、自分と一緒に死んでくれる人間の顔を思い浮かべていたんです」

報道によれば、指揮官が自分と部下達の「死」を考えていた頃、菅直人首相が東電本店に乗り込んで来たという。「撤退したら、東電は100%ツブれる。逃げてみたって逃げ切れないぞ!」テレビ会議で言い放つ首相に、背を向けてスックと立ち上がり、ズボンを下ろし、パンツを出してシャツを入れ直したというエピソードもあったという。東工大の先輩でもある首相への無言の抗議だったのかもしれない。

だが一方で、事故の3年前に東電社内で巨大津波のリスクが試算され、到来の可能性が指摘されていたのに、担当者である設備管理部長としてその対策を見送っていた負の側面も指摘されている。これは組織の一員という立場にいる人には理解できなくもない。たとえ迫り来る最大の危機における傑出したリーダーシップの持ち主でさえも、何もない平時の企業の社内官僚体制にあっては為すべき事も出来なかったのだろうか?

この部分は直接本人から話を聴いてみたいと思ったのは私だけではあるまい。残念至極である。合掌

・・・・・・・

参議院選挙の公示から一週間以上が過ぎた。

自公は衆参ねじれの解消に躍起になっているが、結局は大企業優遇と消費増税が目的のアベノミクス、96条を入口に9条改正を窺う議員発議1/2への改憲論議、今や交渉の主導権はおろか大幅な譲歩も辞さないTPP、安全性の確立どころか原因解明すら終わっていない原発の再稼働、そして二の次三の次にされて過去の事に追いやられつつある震災復興について、国民は自公政権の主張を手放しで支持しているのだろうか?

勢いのままに衆参共に過半数を超える議席を制したら、政権与党としては万々歳だろうが、もはやチェック機能は働かなくなる。どんな法案でも採決にさえ持ち込んでしまえば否決はされないのだから、時の権力者にとってこんなオイシイものはない。

改憲について安倍首相は言った。「国民投票があるから、1/2の議員発議になっても国民の意思を軽んじる事にはならない」 本当だろうか? 国民投票を国政を始めとする数々の選挙に当てはめてみたらいい。有権者、とりわけ無党派層の若者の投票率の低さは目を覆うばかりである。この状態で国民の総意が計れるだろうか?

おまけに国民投票による過半数の判断基準は曖昧で、安倍政権は最も母数の多い「総有権者数」にする気などさらさらなく、「総投票数」はおろか、最も母数の少ない「有効投票数」を基準にするつもりなのだ。棄権はもちろん白票や抗議票も母数から除外される。その上、投票率がいつもの選挙ような40%台だったらどうなるだろうか? 結局、支持政党の組織票と改憲で利する一部有権者の票で決まってしまう公算が大なのである!

アベノミクスの恩恵とやらが自分に返ってこないうちに消費増税に賛成する有権者はいないだろう。昨年の衆院選挙で自公のほとんどの候補者が反対と言っていたTPPも今や首相の声に乗って総員前のめり状態である。核のゴミ処理問題に全く光明が見えないのに原発再稼働やら原発輸出やらに賛成するのはどういう人種かも想像がつく。

民主主義のあるべき姿としてねじれというものは存在するはずである。かと言って、反自公票や批判票の受け皿であるべき野党の足並みも覚束ない。一票を投じる先がないのなら、いっそ棄権しておくか?

バカを言っちゃいけませんよ!

有権者が選挙において一票を投じるという行為は、この国に生きる国民としての意思表明の大きな機会であり大切な手段であるのは論を待たない。だが民主主義が個人の意思の巨大な集合体であるがゆえ、その結果が必ずしも個人の思い通りにはならないのは当然である。だから自分の投じた一票にただ結果だけを求めてはならない。

そこにあるのは国民として一票を投じた瞬間、それまでの傍観者から厳然たる当事者の一員となったという矜持=プライドなのである。選挙権を持った大人の誇りと言ってもいいだろう。

人として誇りを失ったら生きていく意味も薄れるだろう。有権者として選挙権を放棄したら国民としての存在意義も薄れてしまうのではないだろうか? 「有権者はそのまま寝ていろ」とのたまった権力者がまた笑う事になるだろう。

来る投票日には、己れのプライドに懸けて必死に投票先を見極め、必ずや国民としての意思を表明しようではないか!




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Chaie<チャイ>

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最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

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