25年目の邂逅 ~その2

(その1から続く)

地下鉄の駅から待ち合わせ場所のデパート玄関へ足早に向かう。Kの今の姿かたちは分からないかもしれないが、講演会帰りでネクタイをしていると言っていたので、土曜夕方の銀座にはそうはいないだろう。それを手掛かりに玄関に入った。

正面にネクタイ姿の男が一人立っている。よく見れば、顔こそ左右に膨らんではいるが十分あの頃の面影を残しているKだった。目が合ったが、向こうもしばし私の確認に逡巡した様子。こっちも負けずに変貌を遂げているのだから無理もない。確認を終えると、まずは彼行きつけのバーへ。

銀座のバーと言えばクールかルパンあたりかと思っていたら、果たしてルパンだった。珍しくカウンター席は客で溢れていた。我々は奥のカウンター席へ通され、そこの壁には有名な太宰治がカウンターに胡坐をかいて座っている写真が飾られていた。

ここで彼は「K先生」と呼ばれている。「先生と呼ばれる馬鹿もなし」とも言われるが、客が医者ならそう呼ぶしかないのは我々の業界も一緒だ。彼のマイブームと言うモスコミュールでまずは再会を祝って乾杯。銅製のカップに軽く絞ったオレンジが載ったきちんとしたカクテルで、もちろん美味!

そこからKはギムレット、私はドライマティーニ。昔と変わらずにペースが速い。お通しのキュウリをつつきながら飲み干すと、これも彼のマイブームと言うオールドファッションドで〆た。〆たと言ってもオーセンティックバーでカクテルを3杯も飲めば@5000円は当たり前。バーで長居はヤボってもの、いよいよビストロへと移動。

・・・・・・・

ビストロ カシュカシュ」は狭い路地を入ったところにあった。まさに「かくれんぼ」という店名そのままのロケーションだ。隣りにはこれまた有名な「小笹寿し」があった。Kはそこへも行っているらしい。さすがに高収入セレブは行く店も違うねぇ。昔は居酒屋で熱燗がせいぜいだったのに。

さて、中に入って目に飛び込んで来た光景は、明るくきれいなカウンターキッチンといくつかのテーブル席。ここはフレンチビストロだけど、このこじんまりした感じは、いつも行く新宿御苑のイタリアンと重なった。つまりは間違いないお店だと私に教えてくれているのだった。

グランメゾンの名店「アピシウス」出身の人懐こくて話の弾む斎木シェフ、やはりここでも彼を「先生」と呼んでいたが、今夜ばかりはちょっと事情が違っていたようだ。仮にも院長先生に向かって遠慮なくタメ口でツッコむ私に相当驚いている。中学の同級生だとしても、彼がおとなしく人の話に耳を傾けているのを初めて見たと言う。

Kのヤツ、さぞやいつもは先生、先生と周りから持ち上げられているんだろうが、人には言えない恥ずかしい過去を握っている私の前ではそうはいかないっての。

さてメニューはコースだかアラカルトだか知らないが、適当にKに任せた。シェフが「今日はちょっとガンバッちゃっていいですか?」という言葉が少々気になったが、まずは魚介類がたくさん入った海鮮サラダ。これがボトルで入れたカベルネにピッタリ合うから面白い。

続いて名物「フォアジャガ」登場! ジャガイモのポワレにフォアグラが載り、ソースが掛けられている。さすが名物と言われるだけあって、その絶妙なハーモニーはしっかり記憶に残った。この時点ですでにボトルはカラ。お次はメルローの一本をオーダー。やっぱりペース速いぞ。

続いて今夜のスペシャリテ。何と丸のまんまの黒トリュフをクリームソースと共にパイで包んで焼き上げた一品だった! カンナで削らないトリュフなんて初めて食べたが、実に香りが豊かで、何とも嬉しい気分にさせてくれる。

気が付けば2本目のボトルもカラ。しょうがないので、今度は飲んだだけお勘定、残りはお店で引き取るという事で3本目に突入! ツマミはチーズ盛り合わせをオーダー。過去から現在、家族から友人へとまだまだ話は尽きないのだった。

・・・・・・・

さあ、OYAJI二人がここまで盛り上がったら後は歌うしかない! 天下の銀座でカラオケボックス突撃~!

我々の青春時代の音楽はビートルズ系の洋楽とフォーク、ニューミュージックである。特にKと最もよく聴いていたのはアリスにビートルズだった。

「ブログに書いてたけど、今でもアリス歌ってるの?」
「当然! あと昭和限定で何でもね」
「実はオレも歌ってるんだ」

やっぱ話が早いわ。ならば今夜は心置きなくアリスと昭和で行こうじゃないの! 若い連中が新しい知らない歌を歌おうモンなら即消しすら辞さないのだが、それはどうもパワハラにあたるらしく、最近では知らない歌が通り過ぎるのをじっとガマンする事もあった。だが今夜はそんなガマンなど微塵も必要ないのだ~!

アリスだけでも「愛の光」「青春時代(←アリスの)」「黒い瞳の少女」「ジョニーの子守唄」「冬の稲妻」「涙の誓い」「さらば青春の時」「秋止符」「チャンピオン」などなど、誰にもジャマされる事なく炸裂するツインボーカルの連続は気持ちE~! 

その後もビートルズはもちろん、たくろう、かぐや姫、グループサウンズ、果てはムード歌謡まで、昭和これでもか~である。最後は「乾杯」でフィナーレ ・・・だったと思う。

これだけ飲んで食べて喋って歌えば、急速注入されたエタノールが身体中をしっかり巡り、今が何時だかの感覚も無くなった。たぶん2時間以上は歌い続けていただろう。単なるカラオケではない、共通の思い出の歌を通した会話(?)ってのもまたいいモンだ。

・・・・・・・

外へ出たらほぼ日付変更線。今夜は18時前から飲み始めたから、ほぼ6時間以上二人で盛り上がっていた事になる。私は地下鉄の最終、Kは横浜の自宅までタクシーとなったが、講演料が入ったと言ってたからまあいいだろ。再会を約してそれぞれ夜の銀座を後にした。

そういえば、我々の中学の担任の先生が今年傘寿を迎える。この機会に長年ご無沙汰だったクラス会を企画してみようかな。心地よい夜風に身を任せながら、旧友とのこんな素敵な再会の場をもっともっと作れたらいいなんて考えていた。


(おしまい)





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COMMENT

お疲れでした

バーといい、ビストロといい、大満足な一夜でした。あれだけ飲んでもあれだけ歌ったせいか、今朝は元気に目覚めましたわ。
夏頃にはクラス会をやりたいですね。

昨夜はありがとう

久しぶりの痛飲。カラオケもあれだけ(男二人で)歌ったのは初めて。「先生」と呼ばれるのは好きではないが、いちいち修正するのも面倒でそのままにしている。
クラス会は開きたいですね。

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Chaie<チャイ>

Author:Chaie<チャイ>
最初のWebsite開設は2001年のクリスマスのことでした。その後、紆余曲折を経てこのBlogへ引越して今に至ります。これからも日々の記録とさまざまなテーマについての意見や感想などを屁理屈コラム日記風に綴りたいと思ってます。

生まれも育ちも東京の下町です。東京タワーやチキンラーメンと同い年なので結構生きてますが、せめて精神年齢くらいは若いつもりでいたいなと。

自称「日本酒のソムリエ」のつもりでしたが、検査値との闘いの末に禁酒に踏み切り、それ以来かなり普通の生活を送ってます。

下手なアコギとウクレレを弾いて昭和を歌ったり、カラオケでも昭和を歌ったりしてます。最近は40年来の憧れだったMartin D-28Mと80年代製のKamaka HF2に囲まれて幸せです。

もうひとつの大好きは欧州車! プジョー乗りのサークル「POOB(プジョー太平洋OYAJIベルト)」の関東地区元締めなるものをやってます。

実は、足掛け10年乗って来た愛車「プジョー206XS」のミッショントラブルにより箱換えを余儀なくされ、ここでも紆余曲折を経てゲルマン製装甲車のような「BMW120iCoupe」を新たな愛車としました。

それをキッカケにBMWオーナーズクラブの「Club BMW 1(CB1)」「BMWメタボ白髪連合会」などのメンバーにもなりました。

某企業のプロフェッショナルな研修職人を目指して定期的に全国を飛び回ってましたが、ステージを替えて今後は頼れる薬局のOYAJIを目指したいと思います。

愛と情熱を持ってはっきりモノが言える「熱きガンコジジイ」になりたい!

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