感情と秩序7 ~最後の判決
山口県光市で1999年4月に起きた母子殺害事件で殺人と強姦致死などの罪に問われ、差し戻し控訴審で死刑を言い渡された元少年の差し戻し上告審判決で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は20日、「被害者の尊厳を踏みにじった犯行は冷酷、残虐で非人間的な行為だ。被告は殺害態様などについて不合理な弁解を述べており、真摯な反省の情をうかがえる事はできない」と指摘。
その上で、「犯行時少年であったことや、更正の可能性もないとは言えないこ事など酌むべき事情を十分考慮しても、刑事責任はあまりにも重大」と述べ、死刑判決はやむを得ないとした。
1審山口地裁、2審広島高裁は、年齢や更正可能性などを理由に無期懲役としたが、最高裁は「犯行時の年齢は死刑回避の決定的事情とまでは言えない」として、審理を広島高裁に差し戻した。2008年4月の差し戻し控訴審は「極刑回避の事情はない」として死刑を言い渡していた。
死刑が確定するのは当時18歳1カ月だった光市の元会社員大月(旧姓福田)孝行被告(30)。最高裁に記録の残る66年以降、最も若い犯行時年齢での確定となる。
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この痛ましい事件については、このブログで直接的に過去6回書いてきた。
「感情と秩序」(2006年4月19日)
「感情と秩序ふたたび」(2006年6月21日)
「何度でも『感情と秩序』」(2007年6月27日)
「感情と秩序4 ~セカンドレイプ」(2007年7月27日)
「感情と秩序5 ~心の底の言葉」(2007年9月21日)
「感情と秩序6 ~散るべき花と咲くべき花」(2008年4月22日)
事件後の状況について産経新聞の記事(2/20付)にまとめられてあったので、以下に引用(一部改変)しておく。
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事件は1999年4月14日発生した。残業して自宅に戻った本村洋さんは、妻の弥生さんの変わり果てた姿を発見。長女の夕夏ちゃんは、押し入れの天袋の中で遺体で見つかった。その4日後、近くに住んでいた元少年が逮捕された。
1999年8月に山口地裁で公判が始まり、凄惨な犯行状況が次々と明らかになった。弥生さんは殺害後に凌辱され、生後間もない夕夏ちゃんは床に叩きつけられた上、紐で首を絞めて殺害されていた。
だが、本村さんを苦しめたのはそれだけではなかった。被害者や遺族は、傍聴席で被告の主張に耳を傾けるしかないという現状。妻子の遺影を持ち込もうとして職員に制され、「ふざけるな!」と声を荒らげた事もあった。
そんな中、仕事上の逆恨みで妻を殺害された岡村勲弁護士と出会い、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の活動に参加。被害者の権利が保障されていない現状を訴えるため、全国を講演などで飛び回った。
その声は時の首相の心も動かし、小渕恵三元首相から「犯罪被害者やその遺族の気持ちに沿えるよう対処していかなければならないと、痛感しました」という内容の手紙が届いた。2000年に犯罪被害者保護法などが成立し、被害者の法廷での意見陳述などが可能に。2004年には犯罪被害者等基本法が成立し、被害者への支援制度が大きく前進した。
裁判では、元少年に「極刑」を求め続けてきた。年齢と更正可能性などを理由に無期懲役とした1審判決後には「司法に裏切られました」と語り、「判決は加害者だけのものではない。少年への憎しみを乗り越えていくためには、死ぬほど努力しないといけない」と判決に怒りをぶつけた。
2審の「無期懲役」、最高裁の「破棄、差し戻し」を受けて、求めていた「死刑」を聞いたのは2008年4月の差し戻し控訴審判決。4度目の判決、事件から9年が経っていた。その時の心境を、雑誌の手記で「裁判長の声が耳に入った時、あまりにも多くの思いがこみ上げ、目を開ける事も声を発する事もできなかった」と綴った。
これまで積極的に社会に訴えてきた本村さんだが、5度目の判決を前に「沈黙」を貫いている。産経新聞の取材には、こうメールで返信があった。「13年も経過していますのに、事件に関心を寄せて頂けて下さる事に深く感謝致します。ただ、ご依頼の件なのですが、判決当日までご取材は受けないようにしております」
元少年は1、2審で殺意を認めていたが、最初の上告審の途中から殺意を否認している。弁護団によると、20日の判決を前に特段変わった様子はなく、「重大な結果を生じる事をした」と反省の言葉を口にしているという。
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被害者遺族の本村洋さんにも13年という月日が流れていた。
被告には死刑反対論者の弁護士団が付き、主張を転々とさせつつ月日が流れて行った。
だが、被害者の弥生さん、夕夏ちゃん母娘には生きるべき時間を理不尽にも奪われ、その時計は永遠に止められたままである。
私は意趣返しという意味での「刑罰」には必ずしも賛成するつもりはないが、社会から永遠に退場させるに値する「犯罪」は存在すると思う。
現在の日本において永遠に退場させられる「手段」は死刑しかない。
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