食べ手に近づく絶品料理
同じホテルを予約していたY子と共に、これまたホテル近くの常連の焼鳥屋(カウンター席以外は原則自分で焼くので、正確には鳥焼き屋と呼ぶらしい)の「とり藤」へ今年最後の訪店をした。ここ福島は有数の鳥焼き屋激戦地であり、比較的小型の店が20数軒ひしめき合っている。街の雰囲気は大好きな下町風情一杯である。
その中にあって、こことり藤は大きめの店なので少人数なら予約なしでもはいれるので使用勝手が良い。さらに、大阪出身の同僚も絶賛するほど鳥刺しや鳥焼きのレベルが高い。だからお一人様の時でも気軽にカウンターに陣取れる。
このお店での私のリクエストはただひとつ。東京の焼鳥屋ではなかなか食べられない膝ナンコツ、通称「ゲンコツ焼き」だ。一人前15個くらいが焼かれ、タレや岩塩を付けて食べる。そのコリコリした歯応えが実に酒によく合う。まるで親のカタキのようにいつも二人前ずつ平らげている。
そんな客は珍しいのか、年に数回ほどの訪問頻度にも関わらずお店の人も覚えてくれていて「今日ナンコツ入ってますよ」と声を掛けてくれる。もちろん「嬉しいねぇ、じゃあ取りあえず二人前ね」と返す。いつもより遅い時間帯だったが、大好きな芋焼酎「赤兎馬」と共に今年最後のひと時を味わったのだった。
・・・・・・・
翌日の研修終了後は新快速にて京都。
ここでは、すでに京都会場で別領域の研修を終えた同僚S子が居残り、もう一人の同僚W子と3人で、かねてよりある企画を企んでいた。それはS子オススメの料理屋で京料理を堪能しようというものだった。と言っても高級割烹などではなく、先斗町の路地裏にある「与志屋」というお店。
人がすれ違うのがやっとというほど狭い石畳の小路が先斗町だ。その小路を松の木小唄などを口ずさみながら、ぶらりぶらりと歩いた中ほどだろうか、お店の看板が目に入った。待ち合わせの時間にはまだ少々余裕があったが、この日の京都は大阪よりも寒かったので、まあいいやと扉を開けた。
扉を開けたら、いきなりカウンターに座っているお客の背中が目の前に飛び込んで来た。思ったよりかなり狭い間取りだ。我々の席はカウンターの最奥に3つ空けてあったが、そこ以外、12人座れるカウンターと4人座れる小上がりはすでに満席だった。ほとんど地元の人のようなので、これだけでこのお店のレベルの高さが覗われた。
ラガーの大瓶を飲みつつ待つこと10分、2人揃って登場し宴会スタート。
京都と言えばナス。ナスは苦手の私だが、突き出しのナスの胡麻だれは別格で、全く問題なく美味しく頂けた。愛想の良いご主人が今日仕入れている食材と料理を芝居の口上よろしく一気にまくし立てる。まるで生きてるメニューだ。その中から刺身にヨコワ、ぐじの細切り、サバきずしをチョイス。それに白鹿のぬる燗を合わせた。刺身のクオリティは申し分ないが、盛り付けなどに気取りがない。だからリラックスして箸を伸ばせる。
続いて冬の京都定番のかぶら蒸しと雲子焼き。これまた目の前で調理され、京都らしい繊細な味付けだった。料理だけなら高級料亭レベルと言っていいほどなのだが、これらの料理にも妙な気取りがなく、だから気持ち良く口に運んではほっこりとさせられる。万願寺唐辛子焼きも大きくて味わいタップリ。
このお店の料理には、老舗の高級割烹のように食べ手が料理に近づかなくてはならないのではなく、料理が食べ手に近づいて来てくれるのだという印象を強く持った。これが町屋の料理屋の真骨頂なのだろう。ワイワイガヤガヤの中でも妙に落ち着くし、すこぶる居心地が良い。シメはアナゴとギンナン入りの釜めし、デザートは自家製という黒糖のアイスクリームだった。もちろんどれも美味、一同大満足だった。
今夜は男性1人と女性2人という編成だった事もあり、飲食とも通常レベルの量だった。メニューに価格が載ってないので若干不安だったものの、ビールに日本酒3、4合、料理延べ12品で@8000円。お店と料理のクオリティを考えれば、ごく妥当なお代だろう。
この先斗町という狭い界隈は、京都に疎い私が知る数少ない飲食店街だ。ここでは過去も現在も何か新しい発見や驚きをもたらしてくれる。そして吹く風は必ず優しいのである。
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