武蔵、敗れたり
小滝橋通りと言えば、かの有名なラーメン店「麺屋武蔵」がある。実は、名前は知っていたものの、東京にいながら一度も行った事がなかったのだ。行列を避けるために昼休み突入を13時まで遅らせ、トレーナー同士で200m先の店を目指した。
平日の遅い昼の時間帯が幸いして、カウンターを囲む店内の壁際に5~6人が立って並んでいただけだったので、さっそく券売機に向かった。ラーメン、つけ麺、冷やし麺等があったが、初めてなのでラーメンにしようとしたが、これが何と750円。味玉付きは850円、チャーシュー麺に至っては軽く1000円越えである。場所柄を考えてみても尋常とは言えない値段だろう。
庶民の食べ物だった「素」のラーメンは、今時の物価を考えてもせいぜい600円までだ。だから私は、かねがね700円を越す値段の「素」ラーメンには、よほどの理由がなければならないと思っている。しかし残念ながらそこに納得できたラーメンは今までに数少ない。それでも天下の麺屋武蔵ならと、思い切って750円を投資した。
やがて出てきたのは小ぶりの丼に入った魚介系の風味が目立ったスープと太麺、シナチク、チャーシューだった。スープの色は濃いが、味はそれほど濃くはない。麺は、一度に多くのラーメンを同時に作っているせいか、太い割りに歯ごたえがやや足りない。要するに茹で過ぎ気味なのである。
絶対量が少ないため、かなり早く食べ終えたが、総合的には中野の「青葉」と同じ系統という印象を持った。こういうダブルスープのニューウェイブ系のラーメンは、出始めの頃はモノ珍しかっただろうが、今となっては可もなく不可もないといった程度だ。それゆえ750円がいかにも高い。おまけに若い従業員が仕切っているだけで、あの名物創業者の影も形もない。すでに現場に立たない経営者になってしまったのだろうか。
後で受講者の一人から、かつて1時間行列したと言う話を聞いたが、そこまでして食べる値打ちがあるかは大いに疑問である。少なくとも私はもう結構だ。明日の昼食は地鶏の親子丼でも行くかな。